第六十二話 泊まりに行こう


      

少しでも飲んだら車では帰れない。だったら泊まるのが良い。泊まると決まれば、気にする事はありません。昔は別荘的使い方もできますよと営業していましたが、その後の様子を見て、日本人にはこれは無いな〜と思ってきました。しかし、もう一度考え直す余地はあるかもしれません。

実を言いますと、ひとりで泊まった事がありません。あるのは旅先での事。そうじゃ無くて、どこ行くでも無く、ひとりで泊まってみたい。夫婦で泊まるのもありだろう。本当の別荘として、自宅ではできない事をする。だからって特別な事が必要じゃ無い。人間やる事は何処に行っても大して変わらないが、場所と雰囲気が変われば、気分が変わる。そんな些細な事が、視点を変えてくれたりします。

基本的に料理はしない。近くで食事するか、持ち込みか、出前を取る。ピザぐらいなら配達してくれる。片づけるのも面倒くさい。温水が出てもヨットでシャワーは使わない。誰が水浸しになったシャワールームを拭き上げてくれるんだ?そんな面倒なことはしたく無いから、マリーナか、どこかの銭湯か、或いは一日ぐらい無くても良い。でも、泊まってみたい。

では実際、何をするのか?例えば、本を読む。斜め読みみたいに急ぎでは無く、じっくり、誰にも邪魔されないで読む。そのまま寝ちゃっても良い。小説とか文学とか歴史とか何でも好きな本。政治。経済、科学、漫画、ビジネス書、何でもあり。それと、料理はしないけどコーヒーぐらいは入れます。或いは、マリーナに行く前にレンタルビデオ屋に寄って、見たいビデオをビール飲みながら見る。肴も用意しとかなきゃ。そんな程度か?と言われるかもしれませんが、やってみなきゃ本当の処は解りませんから、まずやりましょう。まずは、書斎として。実際にやってみたら、また何か浮かんでくるかもしれない。最近ではWi-Fiを使えるマリーナも増えてきています。それが軌道にのってきたら、夫婦で泊まりもあるかもしれない。いろんな使い方も出てくるかもしれない。さらに、ひょっとしたら、薄暗い夜明けに早朝セーリングとか? 

あるオーナーはステレオに凝っていたらしく、かなり高級のシステムが設置されていた。ここで一杯やりながら音楽を聴いていたのでしょう。もう、引退されましたけど。室内で音楽を鳴らすも、案外、外への漏れはかなり少ないです。また、ある方は楽器の練習に励んでいた。それぞれに楽しみ方があるものです。

一度、ひとりで泊まってみませんか? 一度、夫婦で泊まってみませんか? これまでした事が無いのなら尚更です。一度はやってみないと解りませんから。ヨットは本格的な別荘にもなるんです。それをしてこなかっただけです。これからは、別荘的使い方のノウハウも探求した方が良さそうだ。そうするとセーリングと泊まりのコンビネーションも楽しめる様になるし、泊まりのノウハウは旅先でも使える。もちろんですが、こうした事はデイセーラーだって十分にできるというのは言うまでも無い事です。翌朝、静まり返ったマリーナ、コクピットで味わう夜明けのコーヒーはどんなものか。キャンプ気分?やってみなきゃ解りません。

泊まりとなると、多くの場合、友人達を呼んで、今の季節なら鍋でもと考えるかもしれません。それも良いんですが、そうでは無くて、何もイベント的では無くて、普通に泊まってみたい。その普通をどうしたら楽しめる様にできるか?それが別荘的使い方の基本的ノウハウになるかもしれません。それは普通なだけに最強となり得る。これがたまにでも楽しめる様になったら、旅先での泊まりはもっと楽しくなると思います。それが旅への誘い水になればもっと良い。



次へ       目次へ