第八十四話 次世代セーリング


      

近い将来プッシュボタンセーリングが当たり前になるかもしれない。前話のイーグル54に続いて、イタリアのデイセーラーB33にも次世代としてプッシュボタンセーリングが採用されました。もはや大型艇だからという意味は無く、セーリングは簡単で楽に楽しめるものとして。

ビデオを見れば解りますが、セーリングの始りから終わりまで舵を切る以外はボタン操作だけで完結する。そんな簡単操作でありながら、尚且つ、ハイパフォーマンス、まるでスポーツカーをオートマチックで乗る様なものです。メインシートを引くだけで無くリリースもボタン、ブームバングもボタン、全部ボタン。

B33はパフォーマンス的には既に高いレベルにありましたが、それが今度はオートマチック化する事によってより楽に走らせる事ができる。もはやフィジカルとしてのパワーは全く必要無くなった。と言う事は、このセーリングに必要な事は繊細な感性と言う事になる。感じるセーリングがさらに強調されていく。

セーリングの究極的な目的は感覚です。速いという感覚、滑らかさという感覚、ヒールする、起き上がる、舵を切る、レスポンス、様々な動きを通して様々なフィーリングを楽しむ。風の変化から最後の味わいに至る迄の間の肉体的労力をオートマチック化によって省いてしまった。それによって我々はより感覚に集中する事ができる様になる。

恐らく、今後他のデイセーラーにも採用されていくでしょう。そう遠くない未来、セールフィーリングの良し悪しこそがヨットの性能として議論の的になるかもしれない。


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