第九十三話 セーリング志向の変化


      

ヨット離れはセーリング志向が薄れて来た事が原因だろうか?セーリングよりも便利さや楽、快適、そういう志向が強くなってきたせいでは無かろうか?まてよ、そうでは無くて、ただ、便利装備がいろいろ出てきたもんですから、一時的に惑わされているだけなのかもしれません。

便利志向が強くなるとボートの方がもっと機動的だし、楽で便利じゃないかとなるのは自然な事だろうと思います。でも、言える事は便利だから、楽だからという事が決して面白さにはならないという事です。便利や楽な上で行う行為そのものが面白いかどうかですから。決して便利や楽を拒否するものでは無く、その上での面白さはどこにあるのか?それが必要なんだと思います。

やっぱりヨットはセーリングであり、旅という事になるのだろうと思います。ただ、旅については一方でボートの方が機動力があり、場所に寄っては潮待ちなんかもありますが、ボートはそれも必要無い。もちろん、ヨットの旅を満喫されている方もおられます。しかし、便利と楽と言う見方が強くなるとボート支持派が多くなるのではないかと思います。

一方、セーリングはと言いますと、これはもうヨットでなければなりません。日本は別にしても、海外ではセーリング支持派がデイセーラーに向かう。そういう流れがあります。だから新しいデイセーラーモデルが誕生するわけです。セーリングを味わうならデイセーラー、旅ならクルージング艇だが楽と便利で見るとボートへと目が移る。

さて、海というフィールドで何をどうしたいのか?何を味わいたいか?どんな世界を取り入れたいか?ヨットにしてもボートにしても、それは決して便利や楽が最重要テーマでは無いはずです。そこは遊びですから、所謂ロマンがあるべきだろうと思います。夢や憧れ、想像を掻き立てる何か?便利はそれらの現実の下支えに過ぎません。ヨットにしろボートにしろ、単なるレジャー程度に留めおくのならオーナーになるという様々なコストやリスクとは釣り合わないのではなかろうか?やはりロマンを追求する事があるからこそ、そのコストやリスクを取る価値があるのではないでしょうか?

ところで、上の写真と下の写真は同じモデルです。アレリオン33.カラーリングで印象が違ってきますね。直接セーリングには関係無いし、便利も楽も関係無い。でも、そのこだわりもロマンの一部なんだろうと思います。それこそが遊びの世界です。遊びは感性の世界、それが日常生活に潤いを与えてくれる。



このモデルにはラット仕様もあります。でも、ティラーを好む人も多い。ティラーにダイレクトに伝わる感触の違いでしょうか、これもセーリングに対するこだわり、ロマンのひとつだろうと思います。

と言う事で、圧倒的に多いクルージング艇が便利と快適を強調する様になって、最初は人気を博したものの徐々にボートへの移行が増え、その一方で、セーリング好きはデイセーラーを支持してきた。この流れは当たり前なのかもしれません。それで、今後はクルージング艇がどう変わっていくべきなのか?キャビン拡大競争はピークを既に迎えたのではないかと思います。やっぱりヨットですからセーリングと旅について再考の余地があるのかもしれません。ヨットはもっと感性で捉える方が良いと思うのですが。

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