第七話 本気でやってみる


      

何事も本気でやったら楽しい事ばかりじゃない事は百も承知、でも、本気で遊んだ方が絶対に面白い事は間違いないですし、味わいのレベルが違うと思います。最後のヨットにこだわったら、乗り方にもこだわってみたいと思います。後悔だけはしたく無いですから。

何に本気を出すかは、各人の価値観次第ですが、小型艇に絞って自由自在を目指すというのはかなりグレードが高いと思います。クルージングという分野でそれをやるか、セーリングでやるか?このどちらかをお薦めしたいですね。両方やって良いんですが、主軸はどちらかに決める。何故なら、選択するヨットが違いますから。

クルージングでお薦めはTES28かコンパック27、セーリングを軸とするなら、もちろんデイセーラーです。クルージングにはセーリングも含めますが、それ以上にクルージングのノウハウ、如何なる事態が生じようとも臨機応変に対応できるノウハウです。それとセーリングだったら、もはや言うまでもありませんが、速く走らせるノウハウに限らず、自分のヨットの性格、性能、特徴等を探求する事になるかと思います。そして、どちらも、自分のヨットに習熟して、自分のヨットに関しては誰よりも詳しいエキスパートになります。

そしてどちらも自由自在を目指す。プロになろうって話ではありません。ただ、自分のヨットを知り尽くして、そして自分の乗り方に自由自在になる事です。プロは人にアピールする事になりますが、アマチュアは自分の為で良い。だから気楽です。と言っても、時にはゲストを迎えたりもしますが。

これまでも旅やセーリングをやられてきた方も、あらためて、これからの最後のヨットに探求者となる事を宣言しては如何でしょう。大袈裟ですが。他の遊びもやるでしょうが、探求者を宣言したからには、いつも頭の中にある。どこまでやれるかは解りませんが、探求こそが究極の大人としての遊びでは無かろうか?単なる享楽的な遊びとは全然違います。

ある方、仕事三昧で仕事現役の頃は殆ど乗れなかった。それが引退とともに、初めて湾から外へ、そして九州一周をやり、その後、日本一周をやり、そこからヨットサイズを小さくして、年に1回、近所に一ヶ月程のゆったりした旅を楽しみ、さらにまたサイズダウンして最後はデイセーリングを堪能されました。全てシングルハンドでした。

デイセーリング時に一緒に乗った事がありましたが、確かに自分のヨットと海というものに詳しかった。でも、セーリングに上手かったわけではありません。ただ、遊び心満載で、常識にとらわれない人でしたね。こうしてみたらどうかな?と思いつく事をやって遊んでました。つまり、本気でやれば何かを考え、思いついたりしますが、それを探求して遊んでいた様に思います。自分自身の遊び心の探求者だったのかもしれません。よくお邪魔してはコーヒーをご馳走になりましたが、私なんかより遥かにベテランでしたが、でも、いろいろ質問されるんですね。彼の口癖は”良いんだよ、遊びだもん”でした。彼ほど海とヨットと自分自身の遊び心を楽しんだ人を他に知りません。

どこまでやれるかは問題じゃ無くて、本気でやれば本当の面白さを堪能できると思います。自由自在にもなれるし、自分の本気の遊び心も堪能できると思います。全ては本気度の違いでは無いでしょうか?これからの5年とか10年とか、どう過ごすのかは人生で最も重要なのでは無いでしょうか?誰もがいずれは引退しなければなりません。後悔だけはしたく無いですね。

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