第三十四話 スタイルの変化


      

稼働率が上がると、そこから見えて来るものがある。必要な物、必要で無い物が解って来る。それで、みんなそれぞれに違うスタイルが出来上がって行きます。しかし、違うと言っても共通の部分も出て来るわけで、そこにデザイナーや造船所がその傾向をくみ取る事になります。重要な事は実際に使った上での現実的な変化である事です。

今日のデイセーラーの多くははウィークエンダーとしての居住性を兼ね備えています。少人数の1泊や2泊ぐらいの泊まりの設備は整っています。上のイラストはそんなデイセーラーのひとつだったのですが、別バージョンを発表、キャビンに宿泊設備は設けないで、セールや荷物の収納場所とした。ドマーニ30というデイセーラーです。

スポーツ性がより強いデイセーラーでは泊りの設備を必要としない方々が多いと言う傾向を受けて、従来のキャビン付きとキャビン無しとの両方を出す事になった。これによってさらに排水量は軽くなる。

実際、クルージング艇であってもヨットに泊まった事が無いという方も少なく無いでしょう。ただ、寛いだりする事はある。だからソファーとかは必要だという考え方と、もっとシンプルでも良いんじゃないか、という考え方も出て来た。これは実際に乗って、自分の体験の中から出て来た考え方で、想像だけとは違います。想像はたいてい何でも必要だと思えて来る。

稼働率が上がると、実際に実感できて、何が必要か必要で無いか、むしろ無い方が良いとか、そういう事が実感的に解ります。それがスタイルを創る。キャビン無しのスポーツデイセーラーが生まれてきたという事は、少なからず、そういう需要が生まれてきているという事になります。実際に乗る人達の使い方から来ています。

アメリカには以前からフッド32というキャビン無しのデイセーラーがあります。このヨットの特徴は、より軽い排水量でありながら、セール面積は大きくない。むしろ小さ目。だから操作はその分楽にできる。でも、排水量が軽いので、帆走性能はそれでも充分高い。そこを狙っている。

一方、上記のドマーニはよりスポーツ性を高めた。排水量の軽量化にはこの様に二つの考え方があります。どっちだって選ぶ事ができるので、選択の幅が増えるのは嬉しい。

欧米では動かないのも多いが、でも別荘としての使用頻度は高い。だから、デザイナー、造船所、そしてマリーナさえも、その方向を一層発展させようとする。ただ、最近ではそこにも変化があって、別荘として使えばこそ出て来る新しい考え方もある。それが別荘に縛られたくないという考え方です。

物事は常に変化し続け、使えば良し悪しが解り、自分に合う方向を目指すが、使わなければ、いずれは衰退の方向になってしまわないか?使わないという事自体が既に合っていないという証拠ではないでしょうか?では、使いたくなるスタイルとは何か?

そのひとつとしてデイセーリングをお薦めしてきました。それには今のでっかいボリューム感は無い方が良い。長さの問題というより幅や高さが醸し出すボリューム感はデイセーリングを遊ぶには気持ちが重くなると思う次第です。もっと気軽にできなければデイセーリングさえも難しくなりかねない。

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