第四十五話 愛艇


      

愛車という言葉がありますが、昔は庭先で車を洗っている人を良く見かけたもんです。最近は、洗車場で時々見るぐらいですが、どうも車に対する感覚が昔とは違ってきた様な気がします。今は、昔ほど車を大切にはしなくなってきたのかな〜?足替わりの道具?

オートマチックになって、エアコン付いて、GPSあって、ステレオあって、DVDまであります。便利になればなる程、それは単なる乗り物になる。便利な道具です。壊れたら修理しますが、便利さを享受していただけに、気分を害します。残念ながら、ヨットのポジションも同じかな〜?

本来、ヨットは生活に必要の無い物、無くても一向に構わない。困りもしない。それを敢えて手に入れるのですから、これは単なる道具というより、本来なら、もう一歩も二歩も近い存在になっていても良いのでは無かろうか?もっと可愛がってやった方が良いんじゃなかろうか? ペットの様に家族の一員とまでは言わないものの、その次ぐらいに。

道具でも構わないんですが、そのヨットを通して、本当に何かを楽しんでいるとしたら、大切な道具として可愛がりたくもなります。釣り好きは竿にこだわり大切にし、ゴルフ好きは道具にこだわり大切にする。それが自分の楽しみにかかわってきますから。

セーリング好きはヨットにこだわり大切にする。だから、そのヨットの良い状態をいつも体感できて、それが身体の記憶として残っていきます。船底が少し汚れただけでも気が付いたりします。それって嬉しい事ですよね。解るんですから。そうなると自分のヨットを可愛がりたくなります。だからまた良い状態でセーリングを堪能できます。ただの乗り物だとみると、こうはなりませんね。自分だけ楽しむ事なんてできないんです。相応にヨットを可愛がってこそです。何しろ、ヨットのコンディションに左右されますから。最近シェアーするなんてシステムがある様ですが、そうなるとまして大切になんてしなくなる。

という事で、やっぱりオーナーになる事には重要な意味があります。単に所有権があるという事以上に、オーナーであるからこそ愛艇として大切に可愛がる。だからこそ、ヨットはそれに応え、最高の状態でセーリングを堪能できるようになれるのではないでしょうか?

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