第六十話話 モダンデザインの意義


      

.


モダンデザインはさらなる軽量化を図って、帆走性能を高めています。排水量はクルージング艇の半分以下、いわゆるスポーツセーリングが色濃く出ています。15年程前のブレンタデザインのBヨットから始まって、今日ではいろんな造船所から出ています。

彼らの目的のひとつはやはりレース、ワンデザインレースが多い様ですが、そこまで速いヨットを求めるのはより高い次元でのスポーツセーリングを楽しみたいからに他なりません。レースを楽しむのはもちろんですが、それはほんの一部であって、年間の大半はシングルとか、家族や友人なんかとデイセーリングを楽しむ事の方が多いとの事。そんな時でもスポーツセーリングをより楽しめる。レース目的だけなら、デイセーラーである必要は無いという事になります。

モダンデザインの見た目は、如何にも速そうというものですし、軽そうでもあります。さらに、機能的にも見えます。スピード以外、鋭敏でもあり、繊細さも楽しむ事ができる。それに内装はシンプルとは言っても、ウィークエンドのオーバーナイトを楽しむぐらいの装備はあります。

クラシックデザインのデイセーラーよりさらに軽量化を図ってスピードを求める。スポーツ度は高いですね。そこがモダンデザインのポイントだと思います。スピードのみならず、反応は鋭敏であり、と言う事はその反応が解りやすいですから、操作はより繊細になります。

スピードというのは、何も高速だけをイメージすのでは無く、弱い風の時でも他より速いという事ですから、微軽風をもっと楽しくしたい方にはお薦めです。とは言っても、スピードには遅いと速いの二つしか無いわけでは無く、その間に多くのスピードがあるわけで、クラシックデザインにコードゼロとかジェネカーとかを使って微軽風に、よりスピードを求める事もできます。しかし、モダンデザインも当然同じ事ができ、要はベースとなる基本性能のスピードポテンシャルが高いという事になります。

それで、これは難しいのか?誰でも乗れないのかと言うと、決してそうでは無く、オーナーがどこまでやるか次第であり、抑え気味に走らせる事もできれば、目一杯スポーツする事もできる。リーフを早めにするとか、限界までスポーツするとか。強風側の問題でしょうね。それと鋭敏な反応に合わせるか、適当に済ませるかなんかもあります。

実際、こういうタイプのデイセーラーに乗っているあるオーナー、最初は経験豊富でも何でもなかった。しかし、徐々に、楽しむうちにスポーツセーリングを楽しんでおられます。

ヨットにはクルージング艇からレーサーまでいろんなヨットがありますが、要は基本ポテンシャルが違うわけで、それがスポーツ度の違いであり、どこら辺りのポテンシャルでセーリングしたいかという事になると思います。重いヨットはどう頑張ったって軽いヨットより速くは走れない。それでもスポーツセーリングは楽しめます。スピードやレスポンスや、そういうレベルの違いです。

上と下の写真はオーストリアのA27デイセーラー、排水量は1,700kg、今時のスクウェアトップのメインセールになっています。見るからにスポーティーですね、でも、チークデッキを貼っています。そこが何とも、見た目の柔らかさを演出している様に思えます。そして、このヨット、何故か、ブレンタのB27と同じものなんです。その他、A33というのもあります。

日本では、速いヨットはレースをする為という概念が強すぎます。速いヨットはスピードとより繊細さというスポーツを楽しむ為にある。レースで無くても良いんです。それがモダンデイセーラーの意義なのだと思います。帆走性能のポテンシャルをどこら辺りに置きたいか?これが選択の根拠になるのでは無いでしょうか?それは見た目で結構解るものです。



次へ       目次へ