第四十三話 品質を考える


      

どんなヨットも、そのコンセプトにおける安全性は確保されていると思いますが、それが最低限の品質で、その航行において、安全に航行できるもので無ければなりませんが、その上で、品質をどこまで高めるかという事が、ここで言う処の品質になります。これは必ずしもそうあらねばならないというものでは無く、あれば、もちろんベターですし、造船所がどこまで提供するか、我々側がどこまで求めるかにかかってきます。

その品質の典型は、船体剛性ではないかと思います。強大なストレスを受ける船体、それに対してどれだけの抵抗力があるか? 別にぶっ壊れるか否かの話では無く、ストレスに対して船体が捻じれたり、曲がったり、部分的に一瞬凹んだりという事ができるだけ無い様に船体強度を上げる事は、航行において乗り手の、特に時化た時の安心感に繋がりますし、セーリング時の滑らかさにも繋がります。 要は気分に関わる事です。たかが気分ですが、気分、感覚、フィーリングは最も重要と考えます。

船体強度は、ハルそのものの厚みもありますが、そのハルを内側から補強して創られますが、どの様な部材を、どこに、どのように施工するかによって左右されます。造船所やデザイナーはプロですから、どうすれば強度が上がるかは承知していると思いますが、但し、やればやる程に手間がかかる。つまり、コストがかかる。よって、そのヨットのコンセプトにおける安全性を確保しつつ、それ以上は造船所次第?

頑丈にし過ぎて、重くなり過ぎたなんて事もあるかもしれませんが、でも、クルージング艇なら、多少は重い方が良いですし、それがセーリング重視のヨットであれば、軽量化しつつ頑丈にしなければなりません。軽量化すれば良く走るし、そのうえで船体強度が高いと、時化た時に違うばかりか、普通の時でも、セーリングに滑らかさを感じて、実に気持ちが良い。つまり、品質とは、この気持ち良さに繋がります。ヨットが遊びである限り、この気持ち良さは重要だと思います。セーリング重視艇は特にこの船体剛性を高めた方が良いと思います。

これをどう見分けるか?慣れてくればある程度は見て解るようになりますが、仕様書にも、そこまで詳しくは書いていない。それで、どう見分けるかと言いますと、年間の建造艇数と価格を見ます。手間がかかりますから、そうたくさんは造れない。コストもかかりますから、そう安くも無い。そういう処から想像します。でも、最近は、東ヨーロッパなどの人件費を抑えた国で建造するヨットも多くなりましたので、一概に価格で比較できない事もありますが、そういう時は造船所にいろいろ聞いて確認していきます。

バルクヘッドは船底やデッキにラミネートした方が良い。ストリンガーもラミネートした方が良い。室内家具類も同様です。ビス止めよりボルトナット、パテよりラミネート、何十年も使うヨットですから、船体剛性は気持ちだけでは無く、長い年月の使用においてトラブルも少なくなると思います。

車だって、ボディ剛性が高いと、走りが違いますね。でも、どんな車だってちゃんと走れますから問題があるわけではありません。それはヨットも同じです。ただ、ヨットは舗装道路を走るわけでは無いわけで、波の上ですから、より顕著になるのではないかと思います。


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