第六十二話 ビルジとビルジポンプ


      

船内にビルジが入る。海水だったり、雨水だったり、或いは、清水タンクの配管からの漏れだったりする事も無いわけじゃ無い。いずれにしろ、その原因をチェックする必要はありますが、入った水を排水するのが、ビルジポンプ、これにはマニュアルと電動があります。電動はオートマチックであれば、とっても便利なのですが、落とし穴もあります。

ビルジの侵入経路は、当然ながら、船底に穴が空いた箇所に限定されます。ギャレーのシンクの排水やトイレの給排水、エンジンの冷却水、シャフト式のプロペラなら、スタンチューブ等が考えられます。このうち給排水にはバルブがあって、正常なら漏れる事は無いし、エンジンの冷却水も普通は漏れない。ただ、たまには点検をというぐらいです。という事で、あるとしたら、スタンチューブのみです。また、これには漏れが発生しないPSSという物もあります。

また、もう一つは、マストがスルーデッキの場合は、マスト内に雨水が入り、ビルジに溜まります。これは防ぎようがありません。時に、マスト内に発砲ウレタンを充填し、船外に雨水を流すという方法もあるにはありますが、これも完全には行かない様です。

という事で、ビルジが溜まるという前提で、通常のビルジの溜まり具合を見て、通常以上に増えていたら可能性のある箇所を点検します。バルブを点検する時は、バルブの開閉をして、バルブが固着しないようにしておく事もお勧めです。もし、上記に問題が無ければ、清水タンク及び配管の接続箇所からの漏れの可能性もあります。もし、清水ポンプを備えているなら、水を出すとモーターが作動し、水を止めると圧が一定になって停止します。もし、水を出していないにもかかわらずモーターが作動続けるなら、どこかで水漏れがある可能性がありますので、タンクと配管をチェック、特に接続されている箇所が最も怪しい。

さて、今度は溜まった水の排水ですが、マニュアルで作動させる物と12Vバッテリーのタイプがあり、後者にはオートマチックで、溜まったら排出、排出したら停止と、全て自動的にやってくれるものがあります。これは12Vの電源をOFFにしてもバッテリー直結なので、ヨットに居ない時でも、作動しますので便利です。但し、何事も完璧は無いもので、デメリットもあります。それは、知らないうちに排水してくれるので、水漏れが発生している事に気づかないという事があるという事です。その作動はバッテリーが上がってしまうと動かないのは当然です。ですから、オートマチックがあったとしても、たまには、ビルジ溜まり、エンジンルーム、各バルブ、配管等々に漏れがないかと目視でも確認する事は必要です。

ところで、最近多くのヨットに設置されるようになったのが、セールドライブのエンジンです。これにはスタンチューブがありませんので、当然、水漏れは無し、さらにマストがオンデッキなら、これも水漏れはありませんから、他の給排水のバルブやタンクの配管、エンジンの冷却水が全て問題が無いなら、ビルジは一切入らないという事になります。これ良いです。そのせいでしょうか、昔のヨットには大きなビルジ溜まりを設けてありましたが、最近のは殆どそれが無いというのもあります。漏らないのなら、理論上は無くても良いわけですが、まあ、何があるかは解りませんから、ビルジポンは必須です。でも、漏れの可能性箇所さえ解っていればどこを点検すべきかも解ります。その際、雨水か海水かと判別できれば尚良いです。舐めたら解るんですが、時折、混ざっている事もあります。兎に角、ほったらかしでは無く、たまには自分の目で見て確認する習慣を持って頂きたいと思います。


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