第九十一話 クルージングコードゼロの薦め


      

微風からある程度の強風まで、気持ち良く走ると、セーリングはもっと面白くなるはず。特に、問題は微軽風側ではないか?その為に軽量化したヨットを選択するも、ただ軽量化しただけではバラストも軽くなっているので、強風時のセーリングはどうなるかという事もあります。

アレリオン28は約2.5t、バラストは0.99t、スタビリティーにおいては申し分無いが、敢えて言えば、微風において、少し重さを感じます。セールがもう少し大きかったら、さぞ良いだろうな〜。なんて思ったり。実は、このアレリオン28の出たての頃は、もう30年ぐらい前ですが、セルフタッキングジブの他、通常の大きなジェノアを選択する事ができました。そうすると、かなりセール面積が広くなったわけです。

しかしながら、殆どのオーナー達はセルフタッキングジブを選択し、その後出てきたジブブームを選ぶようになります。ジブブームは確かに上り以外でも、効果的で、綺麗にジブセールを、どの角度でも展開する事ができました。素晴しい発明である事には違いありません。ただ、それでも、微風におけるセーリングには、少し重さを感じたものです。もちろん、強風側には強かった。

そこで、このアレリオン28を微風でも楽しめるようにするには、当初はジェネカーを考えたわけですが、下りには良いものの、上りでは使えない。その後、ファーリングのコードゼロが出てきましたので、これを使えば、微風の上りも楽しめる。じゃあ、下りは? だからと言って、コードゼロとジェネカーの2枚は、特にシングルハンドではとても面倒くさい。じゃあ、どっちが良いか?

最近のコードゼロもいろいろ進化しており、レースならばいろいろ規定がありますが、それ以外のセーリング、お祭りレースも含めて、それなら自由に作れます。セールの大きさ、ドラフトの深さ、素材も自由です。それに、最近では、ファーリングの軸となるアンチトーションロープ(捻じれにくいロープ)を使わないで良いものも出てきて、さらに、UVカバー付きというのもあります。但し、UVカバーがあるとはいえ、オーナー不在時の強風なんかでは、巻き取ったセールにハリヤードテンションをかけていてもバタつきますから、不在時は降ろした方が良いとは思いますが、明日も乗るとか言う場合は、上げたままでも良い。

このコードゼロ、大きなライトジェノアみたいなもので、シートをヨット後部から取っていますから、例えば、軽いスピンクロスなんかを使って、微風の上りから、ある程度の下りにも使えると思います。中強風ではジブとメイン、微風ではコードゼロという使い方をすれば、微風から強風までを、もっと楽しめるのではないかと思います。特にシングルの方には、セールは展開中に安定していますから、使いやすいと思います。但し、風が強い時に使うと、セールが大きいだけにヒール角度もすごく大きくなりますから、あくまで微軽風用と考えます。

マリーナに来て、コードゼロを上げておきます。できればバウスプリットは是非欲しい。それから出航して、風の具合に応じて、ジブとコードゼロを使い分けます。微風ではジブが風の重さで垂れてきますが、そんな時でも軽いコードゼロなら風を捉えて膨らんでくれます。そうすると、これまで、退屈感を感じていた微風でも、スーッと走り出すと思います。それが気持ち良い。

コードゼロはラフをほぼ直線にしてテンションをかけますから、基本的には上り用です。でも、軽い大きなジェノアみたいなものですから、ある程度下りにも使えます。レース以外の第三のセールとしては、これが良いんじゃないかな〜と思います。ご興味のある方は、セールデザインは各セールメーカーと話し合って見てください。また、クルージング艇の場合でも、時にセーリングを楽しむなら、このクルージングコードゼロの採用は検討に値すると思います。

上の写真はどちらもコードゼロです。左の方が浅いセールで、右が深い。よって、左の方ががより上れて、右の方がより下れ得る。でも、左でも、上りではハリヤードテンションを高め、下りで緩めたりして調整もできます。クルージングコードゼロはレースに縛られずに、自由にデザインする事ができます。

これで、船体の軽量化はしつつも、極端に軽い排水量にしなくても、ある程度バラスト重量を増やしたヨットで、微軽風を軽快に走る事ができるのではないかと、日々、妄想しております。


目次へ      次へ