第九十八話 アレリオン30 イズ カミング


      

写真はアレリオン30です。アメリカの高名なデザイナー、ハーショフ氏からの流れを受け継ぐデザインで、クラシックなんだけれど、ちっとも古臭さを感じません。それどころか、この先も、ずっと見劣りしない秀逸なデザインです。だからこそ、世界中にファンが多いのですが、この美しさに高い帆走性能を加えてきたのが、現代のアレリオンシリーズです。

この同じモデルが日本にやってきます。コロナで納期が遅れてしまって、オーナーにはご迷惑をおかけしておりますが、やって来るのが非常に楽しみです。今度来るアレリオンは、写真と違ってネイビーのハル、それにジブブームを設置しています。マストはカーボンです。計器もGPSやオートとパイロットは当然、風向風速にスピード計、デプス計を設置、これからセーリングを堪能し、探求していくのに十分です。

排水量は2,900kg、バラストは1,200kg、SADRは21.4ですから、スイスイ感を感じながら、スタビリティーの高さも感じれる。シングル操作ですから、自由自在にセーリングを安心して探求できるヨットです。このバラスト重量をもっと軽くすれば、もっと速くなりますが、そこは、スタビリティーとのバランスをどこで取るかになり、アレリオンは速いが超速いセーリングを目指しているわけではありません。

デイセーラーにもいろんなパフォーマンスがあり、このアレリオン30はレーサーの様にすっ飛んでいくわけではありませんが、パフォーマンスとスタビリティーのバランスが良くとれており、しかも、高い船体剛性によって滑らかなセーリングを味わう事できます。スタビリティーはセール操作によって変える事ができますが、このアレリオンでは高いスタビリティーによって、フルセールで走れる範囲が広くとれますから、我々がセーリングを堪能するに、良いバランスを持っていると思います。

セーリングの探求では、クルージング艇でももちろん良いのですが、それゃあ高いパフォーマンスを持つヨットの方が面白い。速いし、反応は良いし、でも、高すぎると、それに応じた複雑な操作もしなければならなくなりますので、どこでバランスを取るかがポイントになると思います。これはオーナー次第という事になります。どの辺りを選択するかは、これまでの経験から判断していく事になり、一般的な正解はどこにも無く、自分だけの正解があるという事になります。

一般的な正解が無いというのは、オーナーがどういう操作を楽しんで、どういうパフォーマンスを求めるかによって異なるからです。考えて見れば、レーサーならば速い方が良いわけで、その速いレーサーを乗りこなせるように人数とか腕とかをヨットに合わせる必要があると思いますが、レーサーでは無いセーリング探求では、自分の条件、シングルとかそれ以上とか、どのレベルでの操作を楽しむかにヨットを合わせるという事になるかと思います。それで、レーサーは次々に新しいモデルが出て、古いモデルでは勝てなくなるという現象が生まれますが、デイセーラーは全くそういう事がありません。今現在、幅広いパフォーマンスのデイセーラーが同時に建造されています。この意味は、速いだけが全てでは無いという事になります。様々なバランスがあるという事です。

レーサーはレースに勝つ事を目標としていますが、デイセーラーはセーリングを探求し、堪能する事が目的です。それもシングルで自由自在にです。勝つ事では無く、セールフィーリングが重要なんだと思います。スピード、スタビリティー、操作性、滑らかなセーリング、等々の様々な要素を上質な感覚として捉え、味わう。その醍醐味を楽しむのがデイセーラーだと思います。


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