第三話 マイヨット


      

動かないヨットが多い事は、以前にも書いてきましたが、それは近くを軽視して、遠くを重視するという心理的な要因が作用しているのではなかろうか? 近くよりも遠くの方が価値がある様な気がします。近いと気軽です。でも、それが故に軽んじてしまいます。でも、ヨットは違う。乗り方の問題では無かろうか?

マイヨットを頻度高く使えるようにする事を、ヨット遊びの基本に据えるべきと考えています。もちろん、そうじゃ無い使い方、頻度は少なくても、一旦出れば長期に渡るという遊び方もありますが、それは各人の事情もあります。誰もが、1ヶ月とか2ヶ月とかの時間の都合がつけられるわけではありません。ですから、そういう忙しい方々に、そういう方々が実際に多いですし、近場での使い方というものを見直して欲しいと思っています。

近場と言いますと、デイセーリングですし、ショートのクルージングもあります。デイセーリングは日帰りになるだろうし、ショートは、まあ、例えば、往復で一週間以内とか?都合がつけられる期間、気軽にできる範囲です。気軽ですから、頻度高くできるという事になります。

その他の条件としては、シングルでできると、クルーの心配も無いし、旅にしても誰でも誘う事ができます。友人を誘う場合でも、短期ならまだ何とかなっても、長期になると、なかなか、都合がつけられる方を見つけるのも難しくなります。

という事で、シングルハンドとデイセーリングとショートクルージング、この三つの条件を基本に、頻度高く使えるようにする。もちろん、その他に、ロングもやって良いわけですが、それは基本とは考えていません。それに、シングルで無くても、誰か気の合う友人とのダブルでも、それ以上でも良いわけですが、シングルを可能にしておくと、自由度が高まります。

まずは、デイセーリング、それも、単なるピクニックから、本気のセーリングまで、そのヨットがクルージング艇であっても、デイセーラーはもちろんですが、時に応じて、両方を意識的にやります。ピクニックはのんびりと、本気セーリングはセーリングの探求です。探求ですから、考えたり、工夫したりが必須となりますが、それが面白さを生み出す。近いか遠いかは関係無い。

また、旅は、ホームポートからどこまでの範囲にするかはそれぞれですが、まあ、一週間以内だとするなら、年間に何度か行けると思います。短い程、何度でも行けます。また、そういうクルージング派の方にも、普段はデイセーリングを楽しんでもらいたいし、逆に、セーリング派の方でも、たまにはショートクルージングをやっても良いし、それがデイセーラーであってもです。

兎に角、しょっちゅう使いたくなる様な使い方をする。気軽に、すぐにできる事を基本とする。加えて、泊り、宴会、その他もやっても良いわけで、しょっちゅう使えば、自分のヨットに馴染みますし、ヨットの隅々まで、知っていきますし、当然ながら自由自在感も沸いてきます。これを自分のものにすれば、自分の面白さがどこにあるかも解るし、今後、何をしていきたいかも出てくると思います。兎に角、マリーナには動かない、使われないヨットが多すぎる。

人は簡単な事であれば気軽にやれますし、しょっちゅうやれます。でも、簡単な事はすぐに飽きてきます。ですから、簡単な事で自由自在になって、その後、目的とする事を深く探求していく事をお薦めします。そういう気さえあれば、解らない事、不思議な事を見つけるし、疑問について考えるし、工夫もするし、こうしよう、ああしようが出てきます。それが面白さだと思います。セーリングにしろ、旅にしろ、また、別の事にしろ、自分なりの面白さを持つ事ができれば、動かないヨットになる事は無いと思います。



人はできる事を目指します。できないという問題は嫌なものです。ですから、はなっからしないか、練習してできる様にするかになりますが、例え、できるようになっても、また違う疑問が出てきます。きりがありません。でも、何も疑問の無い世界は退屈なものです。この疑問こそが面白さを創り出す源泉となると思います。シートを少し引いても殆ど変わらないと思うか、その繊細な違いを少しでも感じ取ろうとするか?この意識の違いは非常に大きいと思います。そして、この姿勢が長年に渡る時、積み重ねてきたものはどれだけ違う事か?


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