第五話 定義


      

クルージングとは何か? 勝手な定義ですが、クルージングとは泊りを含めた旅の事だと思います。泊まらないで日帰りなら、それはピクニックの範囲と考えます。この旅はエンジンで走っても構わないし、もちろん、セーリングでも良いし、両方でも良い。つまり、クルージングとは、旅先を楽しむ処にあると思います。もちろん航程も楽しみますが、目的地に早く到着したいし、目的地が優先されると思います。

目的地に到着して、観光したり、散策したり、温泉とか、食事とか、それらは旅の醍醐味です。そのうえで、ヨットに泊まるに、現代のクルージング艇は泊りに対応度が高い。そこまで必要か?なんて言う人も居るぐらい、キャビンは広く、装備的にも豊富に対応できています。もちろん、それでも快適性としては、ホテルや旅館には譲りますが、でも、ヨット泊の趣は、これまた良いものだと思います。

ピクニックとは、日帰りで、ゆったりと海や風を楽しむ事。それには誰かと一緒で、会話を楽しみながら、お弁当を楽しみながら、エンジンはかけずに、もちろんセーリングです。但し、セーリングに対してはそんなに本気じゃない。ゆったりとした雰囲気で、仲間との集いを楽しむ。これは誰もがやる、最も多い使い方かもしれません。

これが、セーリングに本気度を高めていきますと、デイセーリングになります。風とセール、ヨットの動きを良く観察して、風との調和を図り、その走りを感じる事、これには、オーナーの腕によってセーリングが違ってきます。という事は、オーナーは腕を上げるという進化を図り、それに伴ってセーリングから得られるフィーリングも違っていきます。デイセーリングは進化を伴います。

こういう定義をしますと、未経験者でもある程度は想像できるだろうし、自分が味わってみたい事も少しは解るようになれるかもしれません。この中で、ピクニックセーリングは、みんなが経験する事ですし、家族や友人達にも味わってもらう事ができます。ですから、最初にやるのはこのピクニックを自由自在に出来るようにする事かもしれません。

しかしながら、その後もずっとピクニックしかやらないとなると、先々では、徐々に飽きてくるかもしれません。それで、次に、クルージングを目指すか、或いはデイセーリング、両方やっても良いのですが、多分、気持ち的にどちらかを優先するようになるのではないかと思います。ただ、未経験者にとって、どっちが好みかなんて解りませんね。実際にピクニックを何度も経験しながら、どっちが好みかが解っていくものだろうと思います。

そして、全てのヨットがピクニックも旅も、デイセーリングもできます。ただ、ヨットによって、得意分野があって、旅の方が得意、或いは、セーリングの方が得意という違いがあります。前者はクルージング艇と呼ばれ、後者はデイセーラーと呼ばれます。また、その両方を可能としたパフォーマンスクルーザーというのもあります。

クルージング艇とデイセーラーの違いは明らかですが、パフォーマンスクルーザーというのは、クルージングにも、セーリングも得意なので解りにくいかもしれません。取り合えず、パフォーマンスの高いクルージング艇としておきましょう。 クルージング艇は多少重くて良いし、セーリング性能が少しは犠牲になっても、目的は旅であります。でも、クルージング艇を軽量化し、尚且つ船体を強化し、その上でセーリングパフォーマンスを上げます。どの程度まで上げるかは、ヨット次第で異なりますが、確実にクルージング艇よりパフォーマンスは良い。また、ヨットによっては、キャビンの充実度も高くしているブランドもあります。

デイセーラーも同じ様に軽量化と強靭性を備え、尚且つ高いパフォーマンスを演出しています。これとパフォーマンスクルーザーの違いは、船体ボリュームを伴うキャビンの広さ、それとデイセーラーはシングルハンドが可能ですが、パフォーマンスクルーザーは、慣れれば可能であっても、そういう仕様として建造しているわけではありません。

上の写真も、下の写真も、どちらもアルコナ345というパフォーマンスクルーザーです。特に、内装なんかを見ると、クルージング艇に見えますが、見えない部分で軽量化や船体剛性を高くしたりしています。ですから、見た目だけでは判断できないかもしれません。そんな時こそ、仕様書のデータを比較すれば、明らかにになります。また、このジャンルのヨットをレーサー/クルーザーと称する事もありますが、パフォーマンスを強調する為であり、別にレース用というわけではありません。




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