第八話 感覚を大事に


      

前話の続きで言いますと、このセーリングはできるだけ感覚を重視したセーリングです。どこかに行きたいわけじゃ無い、セーリングして、その感覚を味わいに行くわけです。バタバタとせわしない操作なんかせずに、ゆったりとした気持ちでも、感覚だけはちゃんと繊細に感じています。

セールを展開したら、舵を持つ手にかかる微妙な変化をちゃんと感じながら、でも、ひょっとしたら、傍から見てたら、ただぼ〜っとしている様に見えるかもしれませんが、それはバタバタ操作しないからです。全ての艤装を使い、と言っても、全部をしょっちゅう使う事は無いわけで、時に応じてですが、強風から微風まで、その時の風で最高のバランスを模索しながら、最高のフィーリングを感じたい。

とは言っても、時にはぼ〜っとしている時もあるでしょう。のんびり、ビールでも飲みながら、ただ吹かれている時もある。それもたまには良いもんです。兎に角、自転車の様な感じで、バイクの様な、或いは、スポーツカーの様な、自由自在にセーリングをする。そんなセーリングに憧れております。

恐らく、ヨットに泊まる事は滅多には無い。でも、たまには良いか。季節の良い時に。そんな翌朝には、早朝セーリングというのもある。そうすると、みんなが来る頃には、もう帰るなんて事もある。ヨットに多くを求めません。セーリングさえ気持ち良かったら十分です。

そんなヨットはデイセーラーが一番合うと思いますが、好きなヨットであれば良い。でも、ちょっとパフォーマンスが欲しい。これはスポーツだけれど、別にレースじゃあるまいし。 微軽風用としてはコードゼロがある。例えば、アレリオン28は微風時にちょっと重みを感じます。でも、それならコードゼロを使えば問題無いし、このヨットはスタビリティーも高いので、強風もかなり安心できる。

セーリングスピードは、スタビリティーと反比例の関係にあります。ですから、軽風でも比較的良く走るヨットは、スタビリティーがやや犠牲となるだろう。でも、それは悪い話では無く、スポーツ性が高いという意味になります。強風では、やや早めの操作が必要になるかもしれませんが、それがスポーツであり、トータル的に速いわけです。憧れのセーリングは、ゆっくりもしたいので、スポーツ性はやや落とし、その代わり、微軽風にはコードゼロをすぐに展開して、その微軽風のセーリングを感じる。

言い換えれば、凄く高い山に登ろうとするのでは無く、なんちゃって山登りかもしれません。でも、そこそこは高い山、それをゆったりこなしていく。引退したら、そんな風に毎日を過ごせれば良いなと思います。慌てず、騒がず、ゆっくりと、でも、スイスイと自由自在に、多くを感じながら。誰にでも自分にとって面白いとは何かを持っています。セーリングはそれを引き出す手段のひとつです。

誰かがデイセーラーをピクニックヨットと言った。それは違います。ピクニックもできるスポーツヨットです。そのスポーツにもいろんなレベルがある。その低い方でも、実にスポーツセーリングが楽しめる。何と言っても、デイセーラーはシングルで気軽に付き合えるパフォーマンスの高いヨットです。




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