第十六話 クラシックは永遠に


      

現代の多くのヨットがモダンデザインです。恐らく、その方がより有効にスペースを使うとか、便利さや快適性、そして効率の良さを重視していくと、モダンデザインの方が有利なのかもしれません。しかしながら、それでもクラシックデザインは世界的にファンが多いのは何故だろうか? かく言う私もそのファンの一人です。

現代におけるクラシックデザインは、それこそ昔のデザインとは全く違っており、クラシックな雰囲気を残したモダンデザインです。実に洗練されていて、それこそ昔のクラシックの重たさを感じさせる様な事は微塵もありません。存在感たっぷりで、美しく、見ているだけでも惚れ惚れしてしまいます。

ただ、前後の長いオーバーハングはクラシック感を強調しますが、そのオーバーハングのせいで、キャビンは狭くなります。また、低いフリーボードも同様の作用があります。でも、そうであっても、その美しさが、それらを凌いで有り余るものがある。オーバーハングを無くして、キャビンを広げようなんて思いません。所詮、ヨットは遊びなので、効率ばかりを追い求めても、満足感が得られるわけでは無い。感じる処が重要なんだと思います。現代人は、効率を高める事は良い事だと信じていますが、こと遊びに関しては、効率よりも感性の方が重要だと思っています。

現代のクラシックヨットは、その操作性と帆走性能においては、最新のテクノロジーの基に建造されており、それはモダンデザインと変わりません。見た目のデザインだけがクラシックであり、その他、船体に使われる素材、構造、工法は最新であり、船体の水線以下も最新のデザインが施されています。

しかしながら、この様なクラシックデザインが量産艇として建造される事はありません。その理由のひとつは、建造に手間がかかる事、それと一般的にはキャビンが広い方が需要が大きい事ではないかと思います。ですから少量生産となり、あまり多く見かけるものではありません。ですが、世界中にクラシックを生み出すデザイナーがおり、専門の造船所があります。

オランダ人でアンドレーフックという世界的に有名なデザイナーが居ます。彼は実に多くのクラシックデザインを残しています。現在、カスタム艇PC47を建造していますが、これは彼のデザインによるもので、あのワリーナノも彼のデザインによるものです。プロのデザイナーですから技術的、工学的な点において優れている事は当然なのですが、特に、今日ではコンピューターを使ってデザインしますから、優れてソフトを使えば誰もがデザインはできるのかもしれません。しかし、そうなればなる程、デザイナーのセンスが重要になってくると思います。このセンスを気に入って、PC47が選択された次第です。

兎も角、現代のクラシックデザインは、今後、いつの時代になっても変わらぬ美しさを持ち続けるでしょう。将来、新しい素材や技術が開発されてきたとしても、その美しさにおいて変わる事は無い。それがクラシックデザインです。現代のクラシックデザインは、それ以前のデザインを一新したものです。まさしく現代のクラシックデザインと呼んで良いと思います。

上の写真はフックデザインによるイーグル54です。そして、下の写真は同じフックデザインによるイーグル38です。実に美しい。その美しさだけでも価値があると思いますが、その上に高い帆走性能を持っています。遊びは効率じゃ無い、美しいヨットを美しく、軽やかに走らせる。それが遊びの真骨頂ではないかと思います。つまり、永遠なのは遊び心、それがある限りクラシックも永遠です。



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