第十九話 マスト&ブームのメインファーラー


      

最近ではメインセールをファーリングにする要望が増えてきました。そのメインのファーリングには2種類あり、マストに巻く方法とブームに巻く方法です。それで、これはどう違うのか?造船所のオプションリストを見ますと、共通する事がありますが、それはこの二つの違いによるものです。

ファーリング方式はマスト内に巻き取る方式とブーム内に巻き取る方式があります。上の写真はジブファーラーのホィールと同じような物がマストの中に組み込まれています。考え方は同じで、この軸にセールを巻き取る事になり、ブームファーラーは、これと同じ様な軸がブームの中にあります。これ以外に、既存マストに後付けする時にマスト外部に軸を設置する事もあります。

この軸を回転させてセールを巻き取り、マストファーラーなら、メインのアウトホールを引いてセールを引き出す。ブームファーラーなら、メインハリヤードを引いてセールを引き出す。巻き取る時はそれぞれのアウトホールかハリヤードを緩めながら、マスト内、又はブーム内の軸を回転させて巻き取ります。

マストファーリングは、セールを上げる必要が無くなり、その代わりにアウトホールで、ブームの長さ分を引き出す事になります。マストに比べればブームは短いので、出す距離が短い。しかも、出すのに、そんなに力を必要としません。この便利さで、クルージング艇に採用されています。半面、セーリング性能は通常のセールに比べて落ちます。バテンを入れる事ができませんし、大きなローチを取る事もできません。最近は、リーチに縦バテンを入れたりする事もありますが、それでも、セーリング性能は犠牲になってしまいます。でも、クルージング艇としての便利さがあります。

そこで、セーリングを重視するヨットを建造する造船所は、ブームファーラーを採用します。バテンも入れられますし、セーリング性能をキープできます。その代わり、セールはやっぱり上げ下げが必要になります。そこで、ハリヤードウィンチを電動にすれば、それも楽にできる。但し、巻き取る時に、ブームとマストの角度に注意が必要で、それは巻き取るに従って、セールがブームからどんどんマスト側に近づいて巻かれたり、その逆になったりがあるからです。でも、これもブームの角度さえ注意しておけば良い話です。

従って、クルージング艇にはマストファーラー、パフォーマンスヨットにはブームファーラーというのがお薦めです。と言うより、造船所がそういう設定をしているはずです。以前は、大きなヨットはセールも当然大きいので、メインセールをファーリングにするという事でしたが、最近は、小型ヨットにも採用されたりします。クルー不足と高齢化のせいでしょうか?今後は、これがジブファーラーぐらい迄定着するかどうかは解りませんが、増えていくのは間違いない処では無いでしょうか。


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