第二十九話 艤装は一日してならず


      

新艇は、ヨットが来たらキール付けて、マスト立てて、ポンポンと簡単に終わると思われる方が少なくありません。ところが、そうそう簡単に終わらせるわけには行きません。全ての点検を行って、作動に問題は無いかとか、こうした方が、ああした方が良いと良く考えて行います。それによっては追加の部品が必要な時もあります。そうこう考えると、納艇先がどこであろうとも、一旦は弊社のホームポートで艤装を行わねば、きちんとなりません。

また、全般的に言える事ですが、海外の方々は日本人に比べたら少し大雑把と言いますか、きめ細かい配慮が足りない様に感じます。例外もありますが。他人の事は言えませんが、まあ、そこを補うのが我々業者という事になります。完全なプロダクション艇であれば、毎回同じなのかもしれませんが、そこは少数建造艇を取り扱っておりますので、毎回少し違う事もあります。基本は同じですが、進化を常に求めています。部品が変わっていたり、それによって取りまわしが違っていたり、等々です。ちょっとした事も、こちらの作業としては、結構変わったりもします。そこをサポートしていくのが我々の仕事だと思っています。

良いヨットに良い艤装を施して、気持ち良く乗って頂きたい。ヨットは現実が証明している通り、30年も40年も、さらにその後も続いていくものですから、最初が重要だと思います。その良いコンディションを、今度はオーナーが維持していく。それがメインテナンスで、壊れたら修理しますというのでは不十分かな。

海外では新艇時がベストで、そこから落ちていくという考え方では無く、新艇時から自分がより良いコンディションに持っていくという考え方をします。ですから、場合によっては中古の方が新艇より値段が高い事もある。そして、何十年か経って、レストアでもしようものなら、古くたってかなり値段も上がる。そういう市場です。車と違って、何十年も使うのが当たり前だからでしょうね。

日本も、古いヨットが増えました。そのまま現状渡しで、安く販売するというわけにはいかない。整備渡しが当然必要になっていく。そうじゃないと、現状渡しで買って、後から整備費用がすごくかかったなんて事も珍しくはありません。日本も、やっと欧米的な考え方が必要ではなかろうか?今後はレストアなんかも認められていくべきではないかと思います。これは市場が認めるかどうかの問題です。何しろ、ヨットは長持ちです。この先どれだけ持つのか? 先は長い。

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