第四十話 使い方を知る


      

今日、世界のヨットは実に様々で、あらゆる使い方に対応できていると思います。レース、スポーツ、セーリング、クルージング、ピクニック、別荘、いろんなタイプがあります。しかも、ご存知の通り、艤装の進化もすさまじく、今日では、操船に関しては、艤装の仕方次第でどうにでもできるという感じがします。という事は、これはどんなヨットか? なんて思う前に、まずはどんな使い方で楽しみたいか? その方が重要です。 これが見えているのなら、それに見合うヨットが必ずある。ならば、これからはヨットに自分の使い方を合わせるのでは無く、自分の使い方にヨットを合わせる。

近所のクルージングから世界迄、スポーツセーリングからレースまで、ショートハンドから、シングルだって、そのうち完全オートマチックなんていうのも出てくるでしょう。今の処はまだありませんが。自分の使い方がまだ解らない初心者なら、まずはデイセーリングを何度も楽しんで頂きたいと思います。もちろん、デイセーラーである必要は無く、クルージング艇でも構いません。好きなヨットなら何でも構いません。兎に角、セーリングを体得し、自分のヨットの装備等を知る事ができます。バッテリーとそのチャージはどうなっているか? エンジンのベーシックなメインテナンス、スタンチューブ、ビルジポンプ、その他、装備されている艤装の基本的使い方とメインテナンスに慣れてきます。これ、ただ、その役目を知るだけでは無く、全体的に理解する事です。

例えば、ビルジが溜まっているとして、まずはそれが清水なのか海水なのかを舐めて確認します。清水なら雨水かタンクの水、海水なら、海水を使っている箇所(トイレやエンジン等)とかスルハルバルブ、それらのホース接続部等が考えられる。そうすると、点検する箇所が解ります。また、エンジンを始動したら、バッテリーが充電されます。それでもし電圧計があるなら、確認して電圧が上がっていればOK,もし上がっていなければオルタネーターが壊れていると考えられます。こういう具合にヨット全体を理解するという事は発生した現象に対して、あらゆる方向からその原因を考えられるようになる事。そうなると自分でも、かなり慣れた感が得られますね。

慣れてきたその後は、自分の使い方が解ってくる。クルージングに出ても良いし、スポーツしても良いし、場合によってはレースに出る事だってできます。旅を求める方も、最初はデイセーリングを大いに楽しみながら、ヨットのセーリングだけでは無く、全体の扱い方に慣れてしまえば、たとえ違うヨットに乗っても、基本はみんな同じですから、どんなヨットに乗っても戸惑う事は無くなります。それに何といっても、ヨットならではのセーリングの面白さも解る。つまり、デイセーリングは全ての基本であると思います。

近場と言っても、吹かない時も吹く時もあり、天候だっていろいろありますから、いろんな経験をする事ができます。その経験を通じて、いろんな事を学び、今後のヨットライフに活かす事ができる。トラブルだって経験するでしょう。海の上では自分で対応しなければなりません。それだって、近場であれば対応し易い。あらゆる経験が、ベテランヨットマンを創ります。年数じゃ無く、経験の数ですね。

たまにですが、船上から不具合の為に電話を受ける事があります。でも、、不具合の説明が要を得ていないとか、どこを点検して欲しいと言っても、それが通じないとか、いろいろあるんです。つまり、自分のヨットについて知らないと困るのです。ですから、これから始める方は特に、デイセーリングを通じて、自分のヨットを知って頂きたいと思います。それが解れば、理屈を考えて、トラブルがあった時の対応も考える事ができるようになります。何もプロの知識をというのでは無く、基本的な知識です。

デイセーリングを通じて、セーリングの面白さを体得し、基本操作に慣れ、理屈も解るようになり、装備についても使い方はもちろん、基本的知識を得る。ヨットの殆どはデイセーリングを通じて習得する事ができると思います。ですから、まずはデイセーリングをお薦めします。それが、後々の本当の自分の乗り方を知る為に役立つと思います。

それが経験者になると既に知っていますから、特に何も言う事はありません。これまでの経験から、自分の使い方も解っているでしょうから、それをより反映できるヨットを選んで、求め続ければ良いんだろうと思います。ですから、初心者は経験して、経験者になる事が目標です。それを楽しみながらできるのがデイセーリングです。

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