第四十二話 車のエンジンとヨットのセール


      

車もヨットも重量を軽く造る努力をします。走る性能を高くしたい場合は、この軽量化とエンジンの高馬力化で達成しようとしますが、ヨットの場合は、エンジンに当たるのがセールの大きさという事になります。しかし、車と違って、セールをそんなに大きくできるものではありません。そのヨットのサイズに見合う程度で、出来る限りとなるのでしょうが、でも、大きくなれば、操作はちょっと大変になるかもしれません。だから、やっぱり船体軽量化に重きを置く事になります。しかも、効果はその方がでかい。

そこで、どれだけ違うかは、同じサイズのクルージング艇に比べたら、デイセーラーは約半分の重量、この差は実に大きい。クルージング艇のでっかいキャビンに比べたら、デイセーラーのキャビンは小さいし、装備もシンプルです。でも、それだけではあんなに軽量化はできない。デイセーラーはハルもデッキもサンドイッチ構造、挟み込むコア材はバルサとかエアレックスとかいろいろありますが、それらの密度の違うコア材を適所に使って、厚みを厚くします。厚い方が、船体の捻じれに対抗できるからです。でも、厚くしても、コア材は非常に軽い。

その上で、内側に補強材を入れます。もちろん、ハルに一体化させておかなければなりません。バルクヘッドも重要な補強材です。造船所によっては、この補強材にカーボンを使ったり、バルクヘッドにもコア材を使う事もあります。全ては、軽量化と船体剛性の高さを得る為です。これらは見えない部分ですが、ヨットの基本的な性質を成すものであり、セーリングを重視するとこうなります。

すると、クルージング艇より重量は約半分で、セールもクルージング艇よりずっと小さいにも拘わらず、クルージング艇よりセーリング性能が高いヨットが出来上がる。つまり、これはセーリングの操作もし易くなるし、速いし、滑らかさも違う。そういうヨットが出来上がる事になります。

どこまで追い求めるかは造船所によって異なりますが、どんどん追及していったら、デイセーラーだって、一部レーサー程のスピード性能を持つヨットもありますが、多くは、そこまでは求めるわけではありません。だいたいですが、30フィートクラスでセール面積/排水量比で20〜25ぐらい。これはパフォーマンスクルーザーレベルと言えます。でも、デイセーラーはシングル仕様ですから、パフォーマンスクルーザーとも違います。排水量はパフォーマンスクルーザーより遥かに軽く、だからセールも小さくてシングルで操作し易い。でも、その走り、スピード性能に関してはパフォーマンスクルーザーに匹敵します。フィーリングはそれ以上かな。

つまり、デイセーラーはパフォーマンスクルーザーのスピード性能を持ち、それをシングルで容易に走らせる事ができる。まあ、市販のスポーツカーという感じではないかと思います。もちろん、もっとでかいデイセーラーでは、セール面積/排水量比はもっと高い。因みに、イーグル54ではセール面積/排水量比は
30にも及びます。でも、船体がでかいので余裕なんですね。

エンジンにはターボなんていう装備が設置されているのもあります。これはセールで言えば、ラミネートセールと言えるかもしれません。セール面積は同じでも、軽いし、伸びにくいセール、軽いとより弱い風でも風をはらんで推進力を与えてくれますし、ブローが来ても伸びないので、そのまま推進力が増していきます。エンジンにターボは珍しくなくなりましたが、ラミネートセールはレース艇以外ではまだ、あまり使われていませんが、今後は増えていくのかもしれません。

もちろん、一般的なダクロンセールであっても、そのデイセーラーの性能を味わう事ができます。基本的に船体の性能が違うわけですから。だからそれでも良いけど、ただ、ラミネートセールを使うと、その性能はもっと上がります。船体性能+セール性能というわけです。でも、ラミネートセールもいろいろあって、どこまで行けば良いのかは悩みますね。その悩みもまた楽し!

ところで、写真のフライヤー33には標準仕様でセールが付いてます。ノースのノーラムセールですが、これはマイラーフィルムをコア材として薄いダクロン生地でサンドイッチしたものです。マイラーフィルムが伸びを防ぎますが、その両サイドのダクロン生地で補強と紫外線にも強くなります。これが標準ですが、もちろん、もっと軽い素材のセールにアップグレードする事もできます。

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