第五十七話 高齢化がもたらす新な使い方


      

高齢化社会と言われ、ヨット界もそれにならうわけですが、若い人達が減少してきて、今後の世代交代はどうなるのか?なんて言われる事もあります。そんな心配も感じつつ、が、しかし、高齢化によって新しい現象もうまれつつあるのかな?と思われる事もあります。それはヨット滞在型が増えつつあるような気がします。

20年以上も前、クルージング艇を薦めるにあたって旅だけでは無く別荘としても楽しめますよと言ってましたが、実際には殆ど別荘として使う方々は居なかった。キャビンさえもあまり有効に使う事も無く、たまに宴会する程度だった。だから、ギャレーもそんなに使われてもこなかったし、ましてバースなんか、ほんのたまに昼寝する程度であった。それで、その後はクルージング艇であってもセーリングをしましょうなんて言ってきたわけです。

今でも覚えていますが、あるオーストラリアから来た方、週末にヨット出して、夕方にはみんな家路につく。そんな光景を見て、明日は日曜なのに、何でみんな家に帰るんだ?と不思議そうに言った。オーストラリアでは、こういう週末ではみんなヨットに泊まるのが普通なんだそうだ。これが日本人のスタイルなんだな〜と。

ところが、昨今、高齢化が進み、つまり引退後の生活において、滞在型の方が少しづつではありますが、増えてきているような気がします。時間はたっぷりありますから、長期滞在、つまり別荘化と、時に旅も楽しむ。そういう使い方は、今日の広々としたクルージング艇は都合が良いし、欧米は、昔からそうやっていた。昨今のヨットは幅広で広いキャビンを持ちますので、滞在型には都合が良い。上の写真は28フィートですが、充分に広いと思います。それにこのサイズなら操船も楽。

そうなると、例えば都会に在住の方が地方のマリーナにヨットを置くという事が考えられます。海はきれいだし、その海域をピクニックして楽しむ事もあり、地方の旅と地方の文化を楽しめるし、そういう考え方が、今後は増えていくかもしれません。また、その地点から、周辺の地域を旅する事もあり、それはヨットで行くとも限らず、車で旅するという事もあるだろうし、ヨットの旅と同時に、別荘的な使いかたにおいては行動の起点としても考えられます。

現代のヨットはまるで家の様に艤装する事もできますし、快適であり、多少は家より狭いかもしれませんが、夫婦二人なら充分だし、陸電設備があるマリーナも増えてきましたので、エアコンなんかも設置できます。これでやっと現代のヨットのデザインや設備を余すところ無く活用できるのではないでしょうか?ところで、陸電があると、エアコンが使え、しかも、発電機では無いので煩くありません。それに電子レンジ、テレビ、パソコンも使え、バッテリーチャージャーを設置していれば12Vの照明もバッテリーの心配無く過ごせます。自宅と変わらない快適さを満喫できるというわけです。冷蔵庫も回しっぱなしにもできますね。

欧米と違って、若い時には暇が無いので、そんな使い方には無理があった。しかし、高齢化によって、新たな使い方に目覚めるチャンスが来たと捉える事ができます。如何です? ヨット滞在型という使い方を考えても良いのではないでしょうか?また、リモートワークが進んだ若い方々にもお薦めです。

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