第六十話 デイセーラーは何故シングルハンド仕様なのか?


      

今更ではありますが、私の知る限り全てのデイセーラーと称するヨットはシングルハンド仕様です。それが50フィートオーバーであっても、シングルハンドを可能と謳っています。一体、何故でしょうか?と考えるに、ある事に思いつきます。

デイセーラーはセーリングを楽しむ事を主なコンセプトとしています。それがレースであれば、目的はひとつとなり、クルーを含めて全員が目的に集中する事は容易な事、でも、レースでは無い場合、目的が明確で無かったとすると、全員がまとまらなかったりするかもしれません。人数が多ければ多い程、セーリングに集中したい人、のんびりしたい人、いろいろあるし、集中するにも程度が異なるかもしれません。だからと言って、今日は上りのセーリングに集中して走らせるとか何とか、なかなか行かないものです。そうなると、できれば2人とか3人とかの小人数の方がやり易い。

それがひとりならもっとやり易いわけで、セーリングを自分の面白さを求める方法に自由に操作できる事になります。だからデイセーラーはシングルハンド仕様にしておけば、それが可能となり、もちろん、2人でも3人でも可能なわけです。つまり、セーリングを自由自在に、自分の面白さを求めるにはシングルを可能にしておいた方が良いという事では無かったのか?

それがセルフタッキングジブにして、推進力を確保する為に大きなメインとして、全ての操作はコクピットから出る事無く全部できる。リーフさえもシングルラインリーフです。舵を持ったままコントロールを可能にする。

という事で、デイセーラーなら、是非シングルハンドを味わって頂きたい。時に家族や仲間とセーリングするにしても、基本はシングル。但し、シングルには、クルーとのコンビネーションを味わう事ができません。ですから、もし、同じ価値観をシェアできるクルーというより相棒が居てくれるなら、それはとてもラッキーですね。シングルもダブルも味わえるわけです。

もちろん、クルージング艇でもシングルは可能です。オートパイロットをかけて、操作をして、また舵に戻る。デイセーラーとの違いは操作をした瞬間に起こる変化を味わう事はできません。でも、旅が主とすれば、それで良い。それより、昨今のクルージング艇は船体ボリュームが大きいですから、例え、最新の艤装で補えるとしても、その船体ボリュームの圧倒感をどう感じるかがポイントになるかとは思います。でも、それもふたりになると圧倒感は下がります。3人になるともっと。もともとクルージング艇はシングルを謳ってはいない。オーナー側が判断するものです。因みに、50フィートクラスを時々シングルでセーリングしていた人が居ました。一方、30フィートをシングルでは乗れない人も居ました。それぞれですね。

デイセーラーのシングルハンドは、それで乗れるか乗れないかという事では無く、シングルハンドで自由自在に操船できるという点です。操船できるという事ではクルージング艇でも理屈的には可能にはできる。でも、自由自在にセーリングを堪能できるという点、加えて、いつも言うセールフィーリング、帆走性能の違い、それらがデイセーラーならではの特徴です。

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