第六十四話 新しい流れ?


      

オーストリアのサンビームヨット社が昨年の暮れに発表したニューモデル、サンビーム32.1です。全長:9.90mに対して、幅は2.98mと、最近のクルージング艇なら3.5mぐらいあって、サンビーム32.1は比べるとスリムです。でも、デイセーラーならもっと幅は狭く、幅で言えばクルージング艇とデイセーラーの中間サイズです。そして、排水量にしても4,150kgで、クルージング艇なら6t超え、それでセール面積は58.5u(メイン+セルフタッキングジブ)で、SADRは23です。

それで内装を見るとデイセーラーの様なワンルームに個室トイレがあります。やっぱりと言いますか、このヨットはデイセーラーとしてのパフォーマンスに少し広いキャビンというクルージング艇の要素が少し加えてあります。恐らく、デイセーリング+ウィークエンドクルージング+沿岸ならもっと旅も楽しむ事もできる。やっぱりきたかという感じがしました。

クルージング艇の、あの広大なキャビを見るに、そこまで必要か?なんて思う方々も少なく無い。一方、デイセーラーのキャビンは物足りない、せめて個室トイレは欲しいなんて方々もおられます。つまり、このヨットはデイセーラーのセーリングパフォーマンスと旅の要素、別に太平洋を横断したいわけじゃない。気軽にセーリングも旅もしたいだけです。

デッキを見るとバウデッキの延長のままバウスプリットがあり、ハル側はリバースバウ、ちょっとユニークなデザインです。そしてツウィンラット、スウィミングプラットフォームが電動でトランサムからせりだして来る。ウィンチは電動も可能だし、スラスターも可能、コクピットにはフォールディングテーブルと、多くの方々が気軽にセーリングから旅を楽しむ要素がつまっている。幅は3m弱だが、キャビンの広さとしても充分だし、プライバシーを保つ個室は無いが、バウとスターンにバースがあります。後部側のバースはステップの後ろ、普通はここにエンジンが納めてあるが、このヨットのエンジンは、後部バースよりさらに後ろに位置しています。メインテナンスはコクピット側、コクピットロッカー側、そしてアフトバースの方向からもアクセスできます。

これなら、クルージング艇の船体ボリュームの圧倒感も無いし、パフォーマンスも良いし、個室トイレもあるし、何かと使い勝手は良いんじゃなかろうか?バウスプリットもあるので、コードゼロなんかも楽しみたいですね。これが今後の新しいコンセプトとして広がっていくかどうかは見守っていく必要はありますが、デザインの考え方として非常に良いと思いますし、特に30フィート前後あたりで増えて行くんじゃないかと思います。


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