第六十五話 カスタム47も同じ考え方


      

当ホームページのトップページにビデオを掲載しましたが、これはPC47というカスタムで建造したヨットです。オーナーのご要望は、気軽にショートハンドでも、シングルでさえ気軽に出す事ができて、しかも高いパフォーマンスである事。これが日常的な使い方で、たまにはロングのクルージングも楽しめる性能と居住性を持つ事。但し、大きなキャビンは不要。これがオーナーの希望でした。
PC47ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=so93yR-6Qi4

デイセーラーも大きなサイズがありますから、これも検討されたのですが、日常のセーリングに関してはオーナーの希望を満たしていましたが、ロングのクルージングとなると、短期なら良いとしても、ロングになると、やはりもう少しキャビンスぺ―スが欲しいとの事で、だからといって、今日のクルージング艇は広すぎて、そのボリューム感も圧倒的で、気軽に出す事を考えると躊躇するかもしれない。別に、ヨットに泊まる事はあっても、別荘的な使い方が頻繁になるわけじゃないし、そこまで広い必要は無いとの事、それよりセーリングが面白い方が良い。

そこで、いろいろ検討した結果、プロダクション艇には相当するものが無く、結局、カスタム建造という事になりました。気軽な日常セーリングとたまのロングクルージングの両方を満たすヨットは無かったし、セーリングに関しては、いずれ慣れればシングルハンドも含めての事でした。オーナーのクラシック系統デザインの好みとハイパフォーマンスヨット、軽量、頑丈、簡単操作云々という事でオランダのデザイナー、フック氏に依頼し、スタートしたわけです。

コンセプトは気軽なデイセーリングとたまのロングクルージング。この両方をできる限り満たすヨットはプロダクション艇には見当たらなかったわけですが、でも、こういうコンセプトは、今後もっと需要があってしかるべきではなかろうか? 現代のクルージング艇は長期滞在には相応しい広いキャビンを持っていますが、その反対側で圧倒的なでかいボリューム感は気軽さを損なわないか? それに排水量もかなり重いくパフォーマンスに影響するわけです。ボリューム感はクルーが常に居るならまだしも、できればクルー無しでも、シングルで気軽にデイセーリングを楽しめたら良いかと思います。

上記の内装写真を見ても、決して狭い感じはありません。全長:14.4m(47フィート)、これはバウスプリットを含まないハル長です。それに対して、幅は3.9mとスリム。同サイズのクルージング艇なら、70cmぐらいもっと幅広だと思います。そこまで必要か?という具合。そして、最初に出てきたデザインから、オーナーはデッキの高さをさらに10cm下げました。よりボリュームが減じられ、海面にも近い。反面、キャビンの天井の高さは180cmへと低くなりましたが、それでもオーナーにとっては充分。多分、ヨーロッパの方々にとってはもう少し高さが欲しいと思うかもしれませんが、オーナーにとっては不自由は無かった。

電動ウィンチ、メインのブームファーラー、セルフタッキングジブ、バウスラスター、ファーリングジェネカー、セールドライブエンジン、キャビンに入ると、エアコン、冷蔵庫、温水、電子レンジ、等々、必要充分な装備、キャビンも決して狭いわけじゃない。

ハイパフォーマンスの為軽量化を図ります。サンドイッチ構造のハルとデッキ、バウとスターンのバルクヘッドは完全水密にして、全てのバルクヘッドはサンドイッチ構造にして船体に積層、ストリンガーはカーボンです。キールはT型バルブキール、ハイアスペクトのラダー。船体は高い剛性を持ち、尚軽いので微軽風でも滑らかに走ります。バラストは約4t、排水量は約11.5t。走ってグッドフィーリング、旅して快適、そんなヨットだと思います。

近場だけならデイセーラーが良い。ロングだけならクルージング艇でも良い。でも、両方となるとそうは行かない。妥協すれば済む話ですが、どれだけ「妥協できるか?という事で、このヨットはオーナーのコンセプトを最大限に活かしたヨットであり、同時に新しいコンセプトの提案でもあります。今後は、こういうコンセプトのヨットがプロダクション艇として出てくれば良いのですが?これは日本人には合うかもしれない。でも、欧米人にとっては、彼らは頻繁に泊まりますから、広い方が良いと考えるかもしれませんね。


次へ      目次へ