第七十四話 何故デイセーラーを造ったのか?


      

今日のデイセーラーは、それまでの小型艇という事から来るデイセーラーとは一線を画すものです。以前は、小さなサイズ、小さなキャビンという事からでデイセーラーと称していたわけですが、今日のデイセーラーは基本的な考え方が違っていました。何故、そんなヨットが出来たのか?そのきっかけは、ある方がそれ迄はレースを散々してきたが、レース以外で、シングルで気軽にセーリングを楽しみたかったという要望からスタートし、カスタムとして高い帆走性能、シングルでの取り扱い、美しいデザインという事でデザイナーに依頼して建造したのが最初です。30年以上前の事です。

従来のデイセーラーと同じようにキャビンは狭いし、装備もキャビン内に関してはミニマム、それより船体の剛性を高め、高い帆走性能を目指し、シングルハンドを目指した。つまり、レースを目的にはしていないがセーリングを重視した遊びを目指したわけです。それに対して、キャビンの装備等にはあまり求めなかった。セーリングが面白い、でも、レースはセーリング以外の要素もたくさんあって、クルーも必要だし、その面倒もみなくちゃならない。散々レースをやってきた人は、もう充分だと思ったわけで、これからは、気軽にセーリングを純粋に楽しみたいというのが狙いだったそうです。

同様に考える方々も少なく無かったようで、今日では世界中に広がっていきました。もちろん、キャビンの広さ、ギャレーの装備、その他に割り切れない方々も多いですが、それはそれ、楽しみ方の違いです。セーリングそのものを純粋に楽しみたい。キャビンは滅多に使わない。遠くへ旅する事も無い。そういう方々も少なく無いようです。

それから30数年、デイセーラーも進化し続けてきましたが、最初の基本コンセプトはちっとも変わっていません。セーリング性能の向上、それをシングルハンドで楽にこなす。気軽さを携えて、いつでも好きな時に、ちょっとした時間でもスイスイ走って、ヨットと自分の知識と技量、そして感覚を遊ぶ。しょっちゅう乗れるので、自分自身が向上していく事も解ります。

昔はレースか旅かでした。それにデイセーリングが加わりました。日本ではまだまだ少ないのですが、でも、レースをするわけじゃない、かといって旅も滅多にしない。そういう方々も少なくありません。日常的にやる事は、乗らないかピクニック。ならば、デイセーラーに割り切れると、もっと面白い非日常を日常的に楽しめるのではないかと思います。

現在でも、30年前のデイセーラーが今でも同じ仕様で建造され続けていますし、30年前に建造されたそのヨットもいまだ現役でピカピカに整備されています。デザインとしても全く見劣りもしない。そして、それから30年以上が経過する間に、もっとセーリングが速いデイセーラーも開発され、レーサーに匹敵するぐらいのスピード性能を持つものまであります。これは他のコンセプトのヨットでは無い事で、レーサーは速いのが当たり前で、クルージング艇は速いより快適キャビンです。でも、今日、デイセーラーに限っては、クルージング艇より少し速いものから、レーサーに匹敵するものまで同時に市場に存在しています。速いのが遅いのを駆逐するという事は無いんですね。スピード性能に関してはいろんな幅の需要があります。

デザインで言えば、クラシックからモダン、その融合したデザインまであり、どれを選ぶかはオーナー次第、どんなセーリング、ヨットライフを楽しみたいか次第です。しかも、みんなシングルハンドを可能にしています。こんなヨットは他にはありませんね。サイズだって小さなサイズから60フィートのデイセーラーと称するものもあるんです。でかくなると、さすがにキャビンはそこそこ広くはなりますが、でも、クルージング艇に比べるとシンプルです。それで良いんです。それがデイセーラーであり、居住性を高めて重くなってセーリングを犠牲にしたくない。だから、セール面積もクルージング艇より小さいので取り扱いもし易くなります。でも速い。そして、シングルハンドです。

デイセーラーはセーリングを快適に味わう事を目的とし、それは操作とパフォーマンスにおいて現れます。30年前に現れた一個人のコンセプトが、現代に至るまで脈々と続いています。


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