第七十六話 お祭り的レースの重要性


      

レースは順位を競うゲームですから、当然ながら速いヨットなんかが参加します。我こそは、このレースで優勝したぞというのは誇らしくもあります。先日、9月3日と4日にアメリカでニューポートクラシックヨットレガッタというレースが行われました。大小36艇が参加、レースですから順位を競って真剣に走る事は変わりません。しかし、その一方で、このレースはクラシックヨットを集めたイベント、お披露目でもある。自分のヨットが如何に美しいか、また、如何に美しさを維持しているか、まあ、自慢話も飛び交う。それを楽しむイベントでもあります。

スピードだけを競うレースであるなら、速いヨットには敵わない。でも、お祭りだからこそ、楽しめる部分もあります。こういうレースは、クラシックヨットの盛り上げ、継続、ファンの維持、文化の広がり等にも役立っている。レストアという事にもですね。参加艇の中には1944年製というのもあったそうです。レストアした自慢もあったんでしょうね。もちろん、クラシックレースは世界のあっちこっちでも行われています。

つまり、ヨット文化の盛り上げ、広がり、定着には、ただ建造するだけでは不十分で、既存のヨットをより魅力的にしていく必要があり、それにはレースやるのが最も効果的で、容易なんだろうと思います。レースは速いのが勝ちですが、それ以外の要素を含んだレースもたくさんあり、それが重要です。日本でも、順位ばかりでは無い、いろんなお祭りレースがあると良いんですが。でも、今の処は残念ながら順位ばかりのレースの様に思えます。例え、勝てなくても別の面白さがあるレースがあると良いな〜。

例えば、シングルハンドのレース、ダブルハンドレース、男女ペアーによるレース、親子或いは孫、30フィート以下だけのレース、でかいヨットのレース、クルージング艇だけのレース、もちろンクラシックヨットレース、デイセーラーのレース、まあ、いろいろ考えられると思います。これらのレースは互いに競うのが当たり前ですが、同時に、その参加基準に求められる内容を盛り上げる事に主眼があります。これによってヨットのいろんな魅力を広げる為という事もあります。つまり、ヨットにはそのヨットそのものの魅力も当然あるわけですが、それをどう使うかという魅力もあるという事です。本当は、何もレースというイベントだから興味はないという事にしなくても、お祭りというイベント、たまたまそれがレースという形式を取っているに過ぎません。 レースですから、出来る限りはちょっとでも順位を上げたい。それはそれで良いんですが、その事を通じて、いろんなヨットに出会う事が重要です。

ついでにビューティーコンテストなんかもやったらいいかもしれません。如何に美しくメインテナンスされているか、レースで優勝するよりも、こちらの方が重要だったりして。 昔、英国の造船所から、日本はソフトが足りないと指摘された事があります。造れば良いってもんじゃない。速ければ良いってもんじゃない。それらを如何に盛り上げていけるかのソフト、これが重要なんでしょうね。今は開催されなくなりましたが、以前、タレントのタモリさん主催のレースがありましたが、100艇以上の参加艇がありました。潜在的な参加者は多いんだろうと思います。皆さん、何かを待って本当はウズウズしているんじゃないでしょうか?

残念ながら、日本はそこまで至っていないし、個人が簡単にできる事では無いかもしれません。でも、どこかの時点で、日本のどこかでそういうお祭りが実施されて、話題になると、日本中に広がるかもしれません。そういう期待をしています。いつか、どこかで。継続的に。2,3艇だったら、個人的にもできるかな?

要は、どうやって盛り上げて、面白さを創造できるかにかかっている。上手いとか下手とか、知識とか技術とか、必要だけれど、あまり関係無いかもしれない。遊んでいればそのうち上手くなるし。遊んでいればメインテナンスも良くなるだろうし、遊んでいれば全てがうまくいく。でも、これは個人の事、日本全体でも個人を引き上げるような盛り上がりが絶対に必要だろうと思います。それを誰がやるのか?どこかで自然発生的に出てくるまで待つしか無いのかもしれませんが。それまでは、各個人が自分の面白さの為に遊びまくるしかありません。でも、多くの人がそうすれば、自然と何かが生まれてくる。今はまだその時じゃ無いという事かな?

次へ      目次へ