第七十八話 基本の走り 2


      

前話は風向に対する基本的セーリングの考え方でしたが、風速に対する基本的考え方は、風速のプレッシャーに対して、風をもっと取り入れるか逃がすかのどちらかになります。ヨットのパフォーマンスによって違いますが、基本は同じで過ぎた風なら逃がし、足りないならもっと取り入れる。その中から適切な風力のコントロールをしようという話です。

最も簡単なのが、セール面積を増やしたり減らしたりする事で、増やすのはフルセールからコードゼロとかジェネカーを使うだろうし、減らす場合はジブを巻き、メインをリーフする事で大きく変化させる事ができます。ただ、その前に、ジブとメインで風をコントロールします。

セールは揚力を発生させますが、セールが丸く、ドラフトが深くなればなる程大きな揚力、つまりパワーを作り出します。よって風が弱いならドラフトを深く、強いなら浅く。これをバックステーアジャスターを引いて、マストをベンドさせて浅く、バックステーを緩めてドラフトは深く、そしてセールの下側はブームについたアウトホールで、引いて浅く、緩めて深く、実際に試してみて下さい。

このドラフトは深さだけでは無く、その位置も影響があり、ブームの中央からやや前側が良いとされます。風はセールに対して直角にプレッシャーを与え、そのパワーを船体やキールで横流れを防ぐ事で前進の力に変えています。つまり、ドラフトが後ろ過ぎるとヒールする力が大きくなり、その割にスピードは出ていない。だからと言って、ドラフトを前側にし過ぎると、風が乱れてきます。そして、このコントロ―ルをするのがカニンガムです。ハリヤードでも出来ます。引いてラフにテンションをかければ前へ、緩めれば後ろへという具合です。

さて、ドラフト以外ですが、セールのツウィストがあります、セールのリーチ側を閉じるか開くかですが、ブームが上に上がればマストトップとブームエンドの距離が短くなって、リーチは緩み開いて行きます。これで風は逃げる。逆にブームが下に下がればその逆で、リーチは閉じていき、風を取り込みます。でも、風がスムースに流れるのが基本なので、メインのトップバテンのリーチ側の部分がブームと平行にある状態が良いとされています。これをするのがブームバングです。引けばブームは下がりますし、緩めれば上がるというわけです。

さて、次はメインシートのトラベラーです。このトラベラーの長さから見て、上りの時に使います。実際動かしてみると解りますが。トラベラーでメインシートブロックを左右に動かす事ができますが、メインシートを緩めるのとは違って、ブームは左右に動いても上には上がりません。つまり、リーチは開いたり閉じたりする事は無く、セールの角度だけが変わります。例えば、風が弱い時の上りは、風が強い時程角度は上れません。パワーが足りないんです。そこでパワーを付ける為にバックステーとアウトホールを緩めパワーを付けようと試みます。ドラフトは深くなるので、上り過ぎるとセールの裏に風が入りますので、舵で少し落として走りますが、この時、トラベラーで落としてセールの角度を調整します。この時、メインシートでやるとブームが上側にも上がってリーチが緩んでパワーを逃がす事になりますので、そうならないようにトラベラーで角度を調整します。

さて、強風の時は、メインシートを緩めリーチを開いてパワーを逃がしますが、上り角度を稼ぎたい時はトラベラーで引き上げてセールの下部側を内側に引き込んで、セールの上部で風を逃がし、下部で走るという事もあります。そして、これらの範囲以外、これ以上ブームを外側に出した時はバングでブームの高さを調整する事になります。

セーリングは風向に対してセール角度を調整し、風速に対してセールの形を調整しますが、それをどこまでより適切に近づけるかをヨットに設置した艤装を使って調整して遊ぶ事になります。これを全部使ってやる事ができればより適切に近づけるが、一部だけを使ってもセーリングはできるし、ただ、適切からは少し遠くになります。それだけの事ですが、例えば、野球のピッチャーはボールをキャッチャーまで投げる事ができれば成立しますが、そこからより速く投げられるとか、カーブとか、スライダーとか、いろんな球種がありますが、それらも上手く投げる事ができれば、野球はもっと面白くなる。それと同じではないかな〜と思います。知って使えば、より深いセーリングを味わう事ができるようになります。それだけの事と言えばそうなんですが、セーリングを移動目的で使うならまだしも、セーリングは移動目的では無く、セーリングそのものが目的となり、だからこそそれが面白くなければやる意味はあまり無いかな〜とも思います。

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