第九十六話 新艇と中古艇

   
   

メインテナンス、レストア等が広く受け入れられるようになった時、古いヨットも蘇って広く受け入れられるようになります。古いヨットとは言っても、これがかなり職人の手間をかけて堅牢に造られている。古いのはやわじゃ無いんです。現代の大量生産と比べて、昔はもっと職人の手間をかけていましたから。現代のは工法も異なってきましたし、その良さ,メリットもありますが特に大量生産艇については量産し易いやり方が進んできたと思います。それも当然の事だとは思います。

古いヨットの魅力はそのヨットの味わいでしょうか。装備類は最新の物と交換する事ができます。新規に設置する事もできます。但し、船体のデザインは変えられませんがそのデザインが持つ味わいが魅力になります。それは現代のデザインとは異なるものです。

現代のデザインはキャビンが広い、幅も高さも大きくなっていますから。でも、必ずしもそこまで必要か?と思う時もあります。ボリュームが大きいだけにキャビンは広いけれど風圧面積も広いしその分コントロールも難しくなってバウスラスターを付けたりもします。キャビンは狭いと言っても現代版に比べての話でバウキャビン、アフトキャビン、メインサロン、ギャレー等々のレイアウトは現代版も変わらない。ただ現代版はひとつひとつが広くなってきました。でも、数十年前のヨットを見て狭いからノーとは思いませんね、個人的には。

特にクラシック系のデザインは魅力的です。とは言ってもコテコテのリアルクラシックデザインは気持ち的なヘビー感を感じてしまうので(個人的好みですが)、やはりそこまではと思いますが同じクラシック系でもニュークラシック的なデザインやオーソドックスなデザインは蘇らせれば今でも魅力的になります。これからはそんな事を考えながら中古艇を探すという事も良いのではないかと思います。まずは気に入る事が先決です。当時のモダンデザインでも今とは違いますから、これはあくまで個人的好みですね。後はどこまでやるか?

古いヨットでもそのヨットが持つ味わいの魅力は現代版とは全く異なります。例えスピード性能で負けても味わいの魅力では勝るとも劣らない。むしろ現代版より魅力的に感じるデザインもあります。また、現代版の方が例えばスピード的には勝るかもしれない、しかし、何たって速ければ良いというわけでも無い。もちろん帆走性能も必要です。そして味わいの魅力も捨てがたい。こうなるとヨットの魅力は何だろう?スピード、安定性、味わい?

現代に至るまでの歴史を経てヨットは進化しかなり多くのバリエーションと可能性を表してきたと思います。現代の最新工法のバキュームバッグ工法、素材ではカーボンやエポキシ樹脂等、そして現代でも木材を使った工法も進化しながら行われています。それらを全部踏まえて考えればただ速ければ良いってもんじゃない、でかけりゃ良いってもんじゃない、そういう言葉が出てくるんだろうと思います。つまり、それらを踏まえた上で新艇、中古艇を選択していく。そういう時代になっていくのではなかろうか?それは必ずしも新艇の方が中古艇より良いという前提が失われていくのかもしれません。古くても新しくても良いものは良い。素材や工法ばかりでは無く味わいや美しさも含めて。


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