第十四話 コンビネーション

メインとジェノアのコンビネーションです。以前、トップリグで140%ジェノアに対して、メインセールが
マストのファーラーに乗った事があります。ご存知の通り、マストファーラーのメインはドラフトが無い。
巻き取る時にうまく巻きにくいんですね。それにリーチにローチが無い。メインセールにパワーが最も
かかる所です。それが無いどころか、リーチはマストトップからブームエンドまで直線、どころか、マイ
ナスカーブを描いていました。つまり、このヨットはジェノアで走るヨットです。

ブローが入ると船体は大きくヒールし、同時に風上に上ろうとします。これを舵で抑えて、風下側に
切っても良いのですが、舵はかなり重い。それで、セールから風を逃がしてやる事で、舵をそのまま
軽く保ちながら真っ直ぐ進む。ブローを過ぎれば再び引いて元に戻す。こうした方が好きなので、そう
していましたが、この時、メインセールを少々出してもあまり効果が無かった。ジェノアを出すと実に
うまく反応してくれました。ブローに入る前、前方に小波が見える。あと何艇身と数えながら、3、2、1
突入に合わせて、シートを出して、抜けると引く。こういう作業も楽しんだものです。一定のヒール角度
を保ちながらブローを抜けでる。

ただ、シングルハンドの時はどうでしょうか。ウィンチにかかるシートの巻きを解いて、出す。そして、巻
いて再び締める。こういう作業は片手で舵を持って、もう片手でひょいとできるものでは無い。風の強さ
にもよりますが、それで舵をあてていたのでは面白く無いので、セール操作をしたい。もし、メインシート
トラックがコクピットにあって、ブロックとカムクリートでとめてあったら、片手でシートを掴んで、パッと出せ
て、また、パッと引ける。この方が良いと思いました。簡単にできます。ところが、メインシートトラベラー
がキャビンの上にあればこうはいきません。ましてストッパーを通って、ウィンチにかかっている。まずは
ストッパーをフリーにして、ウィンチを巻かなければできません。メインシートにウィンチを使わなければ引
けない。単純に考えて、ブームエンドで引くのと、ブームの中央で引くのとでは、同じ条件の風では2倍
の力が必要です。だから、ウィンチで引く事になる。また、ブーム中央にはそれだけの力がかかるので、
頑丈なブームで無い場合、時にはブームが曲がる事だってあります。

その点、ブームエンドで引くと、中央で引く1/2の力で済む。ですから、片手で引ける。と言う事は、ブー
ム自体にかかる力も1/2の負荷で済む。ですから、メインシートトラベラーはコクピットに合った方が良い
と思うわけです。仮に、クルーが居たとしても、ブームにかかる力は少なくて済む。キャビン天井にあると
使いづらいと思います。まして、最近ではドジャーがついてるヨットが増えてきました。なおさらです。

ただ、ジェノアが大きいヨットでは、メインを少し逃がした程度では効き目が無いかもしれませんね。特に
マストトップリグではそうですね。確かに、セールを小さくするとセール面積が減少するので、軽風では遅く
なる。但し、強風になるとジェノアがリーフするなら、有利にはなります。それに、メインを逃がすと、ジェノア
の風が入るので、ジェノアも逃がさなければならない。まあ、どう考えるかですが、シングルハンドなら、
セルフタッキングと言いたいところですが、そこまでしない場合はオーバーラップの少ない110%かそこいら
でも良いんじゃないかという気がします。その代わり、ハイアスペクト比のセールです。これだとタックも楽で
すし、それにメインセールの方がいろいろコントロールができるので遊べます。

セールエリアが減少するので、嫌がる方もおられます。それはその方の考え方ですから構いませんが、シ
ングルハンドという事を考えると、その方が良いと私は思います。セルフタッキングでも良いと思っているくら
いですから。それに一旦風が上がってくると、リーフしなくても走れる範囲が広い。そして、ダウンウィンドで
はジェノアの役目はダウンします。リードブロックの位置から考えても、ジェノアはダウンウィンド用のセール
では無い。そこで、ジェネカーが登場します。ファーリングジェネカーならシングルでもつかえるし、アビーム
からもう少し上るところまで使える。ジブは割りきって、のぼりからアビーム程度ぐらいまでに使うと思えば、
ジブとジェネカーを使い分けてセーリングすれば、かなり面白いセーリングができるのではないかと思います。

もちろん、クルーが居れば別です。あくまでシングルかダブルハンドでヨットは乗りこなすのが全堤だと思って
いますから。ただ、一人と二人では大違いですね。自分が最も乗れる条件を考えて、シングルなら、そういう
乗り方、ダブルならそういう乗り方をそれぞれが考える事が必要になります。それら条件によっては、セール
エリアが大きい方が絶対速いから良いとは行かない。大切な事はどう乗りこなしていくかという所につきます。
速くても、操船が大変なら、乗らなくなる。多少、そういう部分を犠牲にしても、乗りやすく、気軽で、しかも、
総合的なセーリングを考える事が必要ではないかと思います。

こんな事言うのは私だけなのでしょう。セルフタッキングジブは一向に流行らない。

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