第二話 ノルディックフォーク 25

さて、ここからはしばらくは、当社取り扱い艇について書きたいと思います。このヨットは
オリジナルは古くとか、世界に広がっているとか、そういう事を抜きにしても、クラシック
なデザインはなかなかの存在感がありますし、シンプルにセーリングをしようという、それ
が最も面白いと思わせてくれるヨットだと思います。キャビンは必要最低限で良い。それ
より、時化に強く、いつでも安心して出せる。このサイズで、フリーボードは低く、重心も
低い。フラクショナルリグで、コクピットは極めて低い。乗って、とにかく安心なのです。
小さいけれどもジャイアントなのです。どっしりした走り、水面は近いので、相対的にスピ
ードを感じます。水は上がってこないし、とにかく安心できるヨットなのです。

大きなヨットも良いですが、こういう小さなヨットでも、存在感のあるヨットは良いですね。
この際だから、こういうヨットを縦横無尽に乗りこなして、自由自在にセーリングしてみたら
面白いと思います。マリーナに来て、サーっと走りまわってくる。できるだけ余計な装備
はしない。造船所はデンマークですが、この造船所ではできるだけ標準装備で乗ってほし
いと言います。それがこのヨットを堪能する最高の乗り方ができると言います。もちろん、
いろんなオプションを提供できますが、できれば標準仕様でと言いますね。そして、やがて
はみんなそうなっていくようです。最初はあれこれ付けてという具合ですが、だんだんそれが
広がっていくと、シンプルになっていくようです。何故なら、最も気軽に乗れて、最高のセー
リングが堪能できるからだと思います。

この標準装備で、セーリングするには充分の装備がついています。セールコントロールをす
る装備はバックステアーアジャスターはもちろん、カニンガムもついてる。ウィンデックスも
フェンダーもついてる。船底塗装も標準です。このヨットは既に完成されていると言われます。
セーリングを純粋に堪能したいなら、それに充分な仕様になっている。後は、何も無くても
構わない。とまで言われます。純粋なヨット、濃縮したヨット、そういう気がします。

長い歴史のある欧米では既に深く入りこんでいます。ヨットが何ら特別な物では無く、気軽に
純粋にセーリングを楽しもうという人達、決してマニアックでも無く、シンプルなクラシックヨット
定着していると言っていいでしょう。ですから、人気は高く、造船所は1年分の受注を既に持っ
ています。このサイズのヨットを買うのに1年待たなければならないのは申し訳無いのですが
それだけ愛されています。新艇だけでは無く、40年も50年も前に建造されたヨットをレストア
して乗ったり、とにかく、みんなに愛されているヨットなのです。この気持ち、セーリングを楽し
もうという気持ちが日本にも必要だと思います。フォークボート、これはみんなのボートという
意味です。まさしく、その通りになっています。

日本ではセーリング以外の事に目が行きがちですが、造船所と話をしている間に、なるほど
と何度も思いました。まだまだ日本には少ないのですが、いつかこのヨットが日本中に広がって
行ったとしたら、その時は多くの人達がヨットを特別な物と思わず、身近に感じるようになると
思います。ベーシックと考えて良いと思います。いかにもヨットらしいヨット、それを求めて、欧米
ではビッグボートからの乗り換え組みが非常に多いそうです。35フィート40フィート、あるいは
もっと大きなビッグボートを売って、このフォークボートにされる方が多いと聞きます。シンプルさ
この心を伝えたいと思いますね。

最近、ドイツからの注文があったそうです。オーナーは85歳だそうです。アメリカからも受注した
そうです。中学生の息子とお父さんが乗るそうです。何かこう職人のの匂いがしますね、この
ヨットには。そしてオーナーのイメージも想像できそうです。


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