第三十五話 特殊なヨット

いろんなサイズを建造している造船所とは別に。コンセプトを絞り込んだ特殊なヨットがあります。
もちろん、大量生産はしていない。だから特殊なのかもしれません。特殊である事、コンセプトを
絞り込んでいる事などは、そのコンセプトとピッタリあった使い方をするならば、他のどのヨットより
も優れていると言えると思います。例えば、木造艇、デイセーラー、かなり外洋に特化したヨット、
レーサーもレースという意味合いにおいて特殊といえるかもしれません。これらは、その特化した
コンセプトにおいて絶大な威力を発揮します。しかしながら、その他のコンセプトにおいては弱い。
自分のコンセプトを特化できるなら、これは他のヨットより最高の喜びをもたらせてくれると思います。

スポーツカーでドライブに行く。そういう乗り方があります。もちろん、ドライブついでに食事したり
美しい風景を見たり、そういう事もありますが、ドライブそのものもスポーツカーは面白いものに
してくれます。スポーツカーとはそういう物でしょう。しっかりした足回り、剛性の高いボディー、
低い重心でスピードが速く、加速も良い。荷物をたくさん積む事はできないものの、スポーツと
してドライビングが楽しくなる。これは車社会が発達して出てきた文化でしょう。こういうのはレー
スカーとは違います。スポーツカーです。それに何と言ってもデザインが美しく、かっこいいですね。

ヨットの事を考えてみますと、クルージングかレースしか無い。スポーツヨットというジャンルというか
視点があまり無いような気がします。車と同じように考えた場合、美しいヨットで、セーリングを楽し
みたいという気持ちがあっても良いはずです。スポーツカーと同じように。帆走性能の高い、スポーツ
ヨットで、セーリングを楽しみたい。帆走性能が高いというとすぐにレースと思うのは大間違い。セーリ
ンで速く走りたいのはレーサーだけでは無いはずです。おまけにスポーツヨットにはレーサーが縛ら
れているレーティングというものが全く無い。そんな事を考える必要は無いわけで、純粋にセーリング
をいかに楽しむか、それだけ考えれば良い。という事は、レーサーよりトータルで言えば、楽しくなる
事は当りまえではないか。レーサーのように乗り心地無視の速さを求め、でも同時に、スピードダウン
してもレーティングで有利になるなら性能を落とす。そういう事、一切無しに、スピード、復元性、乗り心
地、操作性、そういう物を追及できる良さがある。こういうヨットの方がセーリングして面白いのは当たり
前ではないかと思うのです。

スポーツカーならぬスポーツヨットですから同じように犠牲にしている物もあります。それはキャビンの
スペースです。乗用車なら5人がゆったり乗れるし、トランクだって大きい。でも、スポーツカーはデザイン
の美しさと、2シーターという割りきりで性能を実現していく。スポーツヨットでも同じです。キャビンは狭い
でも、2シーターという事はありませんので、人数乗れますが、キャビンは大人数がゆったり寛ぐという
スペースは無い。でも、スポーツヨットですから、キャビンに住むわけでは無いのですから、大量に荷物
を積みこむような外洋に出るわけでは無いのですから、それで良い。そんな事より、性能の高さ、それで
いて乗り心地の良さ、操作のし易さ、安全性の高さ、そういう求められる部分に充実させている。それで
良い。

こういうスポーツヨットをどんな風に楽しむか。それはスポーツカーと同じでしょう。最近、あらためてアレリ
オン28のビデオを見ました。個人的には私の理想のヨットなのですが、まさしくこのスポーツヨットに相応
しいヨットだなと感じた次第です。シングルハンドでも、マリーナの狭い場所からの出し入れから始まって
この小回りの効く、ヨット、それでいて直進性の良さ。のぼりでティラーをショックコードで留めて、手放し
で真っ直ぐ走る。それでいてレスポンスが良く、走って面白い。まさしく、自由自在、これこそスポーツヨット
としての代表格ではないかと認識した次第です。それに何と言っても、美しい。

アレリオンについては前にも書きましたが、また詳しく紹介したくなりましたので、勝手ながらページを割い
てみたいと思います。こういうヨットにすると、大勢でキャビンで寛ぐには狭いとか、宴会向きでも無いし、
遠くへ行くにもちょっとと、割りきれない方が多いのは充分承知しています。でも、こういうヨットがあっても
良いし、逆に。割りきってしまうと、これほど楽しめるものは無いかもしれません。

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