第四十話 セーリングして解るヨットの良さ

Q. どうして、日本には良いヨットが入らないんでしょう?世界にはたくさんのヨットがあり、
  日本でもそれらを買える人達は一杯居ると思うんですが。

A. 良さを知るには、ヨットの事をしらなければいけませんが、知るには乗らなきゃ解らない。
  乗っても、エンジンばかりじゃ解らないので、セーリングしなきゃ解らない。キャビンの広さ
  や豪華さ、そういう物しか見ない傾向にあります。多分、まだまだ歴史が浅いせいだと思
  います。

Q. 良いヨットとは何でしょうか?

A. 自分のコンセプトに合うヨット、これはひとつの評価です。別の面を見ると、同じコンセプト
  でも、質の良し悪しがある。一見、形は同じでも中身が違う。例えば、DIYのショップで、
  自分で組み立てる式の本棚がある。これも本棚ですから、本を収納するというコンセプト
  では合っている。家具屋に行って、職人が造った本棚もある。価格は何倍も違う。これと
  同じでしょう。ただ、本棚は置いておけば良いが、ヨットは走りますから、質の違いの影響
  は大きいと思います。セーリングしないなら関係ありませんが。

Q. 良いヨットを見分ける方法とは?

A. 慣れると解るんですが、まず見ただけで違う。何と言うか風格というか、ヨットの周りを
  囲む空気が違うというか、オーラが違う。こんな事言っても難しいですよね。最も解りやすい
  のは、年間の建造艇数と現地価格だと思います。同じコンセプトにあるヨットで、これを比較
  すれば、建造艇数がより少なく、価格が高い方が、だいたい質的にも良い。建造艇数は
  職人の手間のかけ方が違うし、価格はそれに伴ってくる。価格が高いのに生き残っている
  造船所は、市場がその価値を認めていると考えています。

Q. 質の高いヨットというのは、実際どう違うんでしょう?

A. 昔はハルとデッキ以外にモールドを使う事は無かった。しかし、モールドは大量に造れば
  造る程、便利ですから、内装の天井、床、シート、船底のストリンガー、できる限りの部位
  にモールドを使うようになり、せぇの、で製造開始して、後はパタパタ組み立てるだけにな
  てきました。40フィートのヨットで2週間で完成という記事を読んだ事があります。これで、形
  はできる。でも、船体剛性は弱いし、バルクヘッドなどは接着のみで、強いヨットにはならない
  おまけに、キャビン重視の傾向で、空間が大きい。と言う事は余計強くはならない。
  一方、手間をかけているヨットはストリンガーをきちんと積層したり、バルクヘッドも積層、強い
  船体を造る。積層ひとつとっても素人がするのと、職人がするのでは違ってくる。強いヨット
  重いという意味ではありません、安心だし、乗ってみると解ります。部品の取り付け方、配線
  の仕方、ひとつひとつが違う。バランスも良いし、寿命も違うでしょう。

Q. それじゃ、誰でも良いヨットに乗るべきでしょうか? 良いヨットは高いです。

A. エントリーレベルはそれで良いと思います。価格が安いので入りやすい。それを乗りこんで、
  ヨットの事が解ってくると、上のレベルのヨットに乗りたくなる。予算の問題があるなら、安い
  大きなサイズより、ひとサイズ落として、上のレベルの方が良いと思います。セーリングする
  ならですが。欧米でも大量生産艇は常に新規の、ヨットを始める層を捕まえなければなりませ
  ん。それが宿命です。それで、彼らが将来買いかえる時に、質の高いヨットを造る造船所は
  それを待っている。そういう図式でしょう。日本では、大量生産艇もそうでない艇も同じレベル
  で競合している。それでは、良いヨットは入らないという事になります。もっと.知るべきだと思
  いますね。知った上で購入すべきでしょう。そうしたら過大な期待はしなくて済む。

Q. 良いヨットにのるべきなんでしょうか、みんな。

A. 良いヨットが良いに決まってますが、どんなヨットでも完璧はありえない。それを知って、どんな
  ヨットであるか知って乗るべきだと思います。大切な事は知る事だと思います。そして、自分の
  コンセプトにあったヨットを見つける事だと思います。でも、そのコンセプトを限定すればする程
  その分野での性能は上がる。その分面白いと思います。一般的にはゼロか百という事は無い
  ので、その割合がどうかという事だと思います。

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