第四十二話 見えない物を見る

日本のメーカーで、名前は聞いた事も無いような名前だったが、今、世界中の料理人に人気の
高いナイフがあるらしい。物はシンプル、でもその切れ味の良い事。サンドイッチを作って10cm
以上の高さに積んで、それをこのナイフで切ったら、両脇がめりこむことなく、スーっと切れた。
シェフご用達のナイフらしい。ナイフは切れてなんぼです。

この前、昔ポルシェの営業をしていた営業マンの話。時速150だったか200だったか忘れました
が、その速度で急ブレーキを踏む。ポルシェはそれでも全く車体が左右に振れないで真っ直ぐ停止。

先日、ある社長がベンツで事故をおこした。車は大破、でも、社長は全くの無傷だったとか。

あるボートのオーナーは明日の仕事を考えて、どうしても帰らざるを得なかった。台風が近づき、波
は4,5mはあっただろう。でも、全く恐怖を感じなかった。この間、そのボートに載せてもらった。30
ノットのスピードで突っ走るも、コクピットでポケットに手を突っ込んだまま、突っ立って居られた。一切
のしぶきもかからない。

2年ぐらい前に、初めてヨットに乗った女性がいた。ステアリングを持たせてあげると、女性曰く、この
ヨットは自分で最適な方向に行くような感じがすると言った。オーナーいわく、ヨットが行きたい方向
に行かせるようにするのが最も良いといわれた。

20mの風速の中で、全く素人の奥さん曰く、全く恐怖を感じなかった。良いヨットですねと言われた。
嬉しかったです。

25フィートのヨット、波が出ても、実にどっしりしている。頼もしさを感じる。波にも柔らかいし、デッキ
に波が上がってこない。

直進性が良いのはロングキールだけじゃない。フィンキールだって、舵から手を離しても、真っ直ぐ走
ってくれるのもある。

あるヨット、エンジンでも帆走でも舵が左に取られる。何時間も乗ってると舵を抑える腕が痛くなって
しまった。

タックしてもタックしてもぜんぜん進んでいない。横流ればかりするヨットがあった。

時化ても船内のステアリングがあったから濡れないで済む。でも、波があるときはローリングして
辛かった。

ちょこっとキールをかすめる程だったのに、キールの船底から海水が漏れ出した。ドンとぶつけたのに
キールの鉛がほんの少し削れただけですんだ。

ちょっとブローが入っただけなのに、大きくヒールしてしまう。微風なら負けないが、ちょっと吹くと
早めにリーフしないと乗れない。

波が少し高いぐらいなのに、船体がぶっ壊れるかとひやひやもんだった。

重い船体なのに、どうしてどうして、結構走るじゃない。重厚な走りは安心感がある。

150%ものジェノアを持ってるが、ダウンウィンドになったら、とたんにスピンをつけた小型艇に抜かれ
てしまった。

バルクヘッドの天井側、ちょっと曲がって無い?裏側を見ると、ハルと接触する部分にパテうち。これ
が割れていた。修理してよ。いいけどパテじゃまた割れるよ。といわれた。

こんな話には枚挙に暇が無い。ヨットの本質は見かけにあるのでは無く、見えないところにある。でも、
良く見れば、見えないところがしっかりしている物は、全体にもその雰囲気を漂わせている。それで、
見た目にもやっぱり現れている。

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