第四十三話 理想のセーリング
| 誰でも、理想的なセーリングスタイルを持つべきだと思う。シングルなら、自分一人でセールを上げる 所から始まって、どんなセーリングをしたいか想像してみるのも悪くない。デッキから上はできるだけ 効率の良いセールトリミングをして、水線以下は、できるだけ抵抗を少なくする。これを基本に考える。 セールの角度やトリミングはなかなか難しいが、水線以下は水が滑らかに流れるように船底をきれい にしておけば良い。水線以下で動くものと言えば、舵だけである。そうすると、舵もできるだけ真っ直ぐ にしておくのが良いという事はすぐにわかる。 ブローが入ったら、風をどう逃がすか、メイン？それともジェノア？ぱっと逃がして、抜ければすぐに引く。 タックはどんな順序で、どのぐらい舵を切って、新たなシートの引き込みのタイミングは？アビームから 上ったり、下ったり、バングは、バックステーアジャスターはどんなタイミング引くか、緩めるか。 そういう事を考えたら、どこにどんな配置をしたら良いかを考える。微風の時は、強風の時は？リーフ はどうする。どんなシステムが良いか.こんな事が楽しいと思えないなら、セーリングを楽しむのも無理だ。 ダブルハンドなら、また違う。もっと人数が居るなら、また違う。自分がどんな乗り方で乗るか。最も可能 性のある乗り方はどんなのかを想像してみる。宛てにならないクルーは計算に入れない方が良い。 どんな乗り方とは、一人で乗るか、二人でのるか、もっとたくさんかという意味で、その他の、どんな乗 り方かとは、ただより速く、スムースにセーリングをする事になる。だから、クルージング派の方も、どん な乗り方ですかと聞かれたら、人数を答えて、よりスムースにと答えるのが良い。遠くに行く目的があっ ても、遠くに行く以外は、理想的なセーリングを目指して、セーリングの醍醐味を味わうのが良い。 セーリング艤装より冷蔵庫を薦める奴は信用ならない。セーリングより広いキャビンを強調する奴は信用 ならない。高い帆走性能では無くても、そのヨットが持つコンセプトをきちんと説明するのが良い。全ての 人が私に同意はしないだろう。でも、少なくとも、そのヨットが持つコンセプトは、そのコンセプトにおいて 最も適しているのだから、それを伝えるようにしよう。どれもが悪いヨットでは無い。そのヨットが持つコン セプトが大事なのだと思う。 ヨットに住む人には広いキャビンが良い。セーリングを楽しみたい方には、操作がし易い方が良い。より 速いスピードを求める方にはハイパフォーマンス艇が良い。外洋に行く人には外洋艇がある。年とって 体力が衰えてきた人にはそういう装備が必要だ。但し、これらの全てを充分に満足させるヨットは存在 しない。 |