第五十話 シングルハンド

当社のホームページでは、シングルハンドのページに訪問件数が多いです。それだけ多くの
方が関心を持たれているという事です。シングルハンドで操船できるヨットとは、いかなる物か?
これからは、できれば誰もがシングルハンドで乗る事ができるならば、クルーの要る居ないに
関わらずいつでも、出したい時に出せるという事になりますので、皆さんにお奨めしたい乗り方です。

エンジンでマリーナから出る。これがまず第一の関門ですが、小さなヨットなら問題無い、しかし
ながら大きなヨットになると、戸惑ってしまいます。自分のヨットだけならいざしらず、他人のヨット
にぶつけるわけにはいかない。それで、逆にエンジン操作が思いきってできなくなり、余計に
風に流されてしまい、にっちもさっちも行かなくなる。特に、最近の艇は水線から上の構造物が
でか過ぎるので、風圧面積が大きい。10年ぐらい前までは結構フリーボードは低かったと思い
ますが、今はどんどんでかくなっている。決して良いとは思えません。とにかく、マリーナを出る
時は風を見て、どうやって出るかを決めて出す。必要ならバックで出る。最初からバックで出る
つもりなら、案外出しやすい。いっそのこと後ろ向きになって、ステアリングを取るとやりやすい。
言ってみれば、マリーナの出し入れでヨットのサイズが決まるのかもしれません。

マリーナを出してしまえば、こっちのもの。もちろん、気楽に出せれるようでなくてはなりませんが
練習次第では結構な大きさまでできますし、マリーナの事情にもよる。それに、行った先がマリー
ナのように施設が整っているとは限らないので、その事も考えなければなりません。とにかく、自分
が気楽に出し入れできるようになるのが重要です。気楽でなければ、そのヨットはやがては出なく
なる。

メインセールを上げる時、今ではオートパイロットが普及してきましたので、舵から手を離す事ができ
ます。それでメインセールを上げる。シングルの時、このメインセールを上げる力をどう考えるかです。
自分の体力を考えて、どの程度のセールならそれほど無理無く上げる事ができるのか。それを考え
ます。メインセールは最近殆どがスライダー式になっています。それもフルバテンにレージージャック
が多い。フルバテンはセールカーブを整えるのには有利なのですが、セールを上げる時にバテン部分
がマスト側に押される為、摩擦が大きくなり、ある程度上げると、そこからかなりきつい思いをしなけ
ればならない場合が多いです。せっかく、気楽にマリーナを出ても、セール上げるのに一苦労では、こ
れまた宜しくない。

これを解決する方法は三つ。ひとつはファーラーにする事です。できればブームファーラーが良い。マス
トファーラーはセールがかみこんだりした場合、高い位置ですから届きません。でも、ブームファーラー
ならトラブルは手が届く範囲です。それにセールもバテンが入れられるし、最もパワーが乗るリーチも
取れる。ただ、以前とセールを上げるという作業は発生します。ただ、スライダー時より楽だとい思いま
す。次に、メインセールのスライダーをベアリング付きに交換する方法もあります。これでかなり上げ下げ
がスムースになるでしょう。そして3番目は、ハリヤードウィンチを1個だけ電動にするかです。電動に
しますと、メインを上げるだけでなく、他のシートを引く場合でも、取りまわして、この電動ウィンチを使う
事ができます。ファーラーは非常に高価になるので、それなら電動ウィンチを1個設置した方が良いので
はと思います。既存のウィンチに設置できる場合もあります。

ジブはたいていファーラーですので、ドラムラインをリリースして、シートを引けばセールはすぐに展開でき
る。さて、シングルハンドのセーリングはこれからです。このままオートパイロットを使ってセーリングした
方が良いでしょうか?自分はシートの出し入れ、ヘルムは機械に任せますか?任せれば、シングルで
乗る事はどんなヨットでも可能です。でも、これで面白いのでしょうか?オートパイロットのクルーになって
もしょうがない。やはり、自分で舵を握るのが基本でしょう。その方が面白いのです。

舵を握っていますと、舵を伝って、いろんな感触が感じられます。ふっと抵抗がでてきたり、微妙な感覚
はステアリングよりもティラーの方が敏感に感じられる。舵を持ったまま、他のシート類を操作できる。
これがシングルハンドの理想形です。そうしますと、シートに手が届くかどうか、手が届いても引いたり
出したり容易にできるか?一般的に言って、ジブシートはウィンチに巻かれ、ちょっと面倒です。両手を
使わなければならない場合もある。ティラーなら、両足の間にティラーをはさんで、両手でシートウィンチ
を操作できる。ステアリングの場合はこうは行かない。オーパイかけて、という方法もありますが、できれ
オーパイはセーリングを楽しむ意味ではあまり使いたくは無い。それなら、メインシートはどうか?
メインはまた遠い存在ですから、そういうヨットが多いですから、これはあまりお奨めしたくはありません。
コクピットにあれば、片手でさっと出し入れできる。これが良い。

タックをする時はどうやってやるか。舵を切り、そしてジブの左右への入れ替えをどうやってスムースに
やるかを考えます。ジブシートは舵を切りながら、セールに裏風が入り始めたらリリース、そして素早く
新しい風下のシートを引く。ウィンチを使うので、両手が居るでしょう。大きなジェノアでは難しいかもしれ
ない。シートの結び目がステイにひっかかたりするかもしれない。舵の操作とのコンビネーションが大切
です。自分一人でやってると良く解る。

ジャイブもある。今度はメインセールが大きく外に出ていますので、このままジャイブしては危険です。
メインシートを一旦引いて、ブームを内側にいれて、再びリリース。それにジブもある。舵もある。それで
お奨めはやはり小さなジブにする方が良いと思います。

やむをえない場合はオートパイロットを使いますが、できるだけ自分の力で操作する方が面白くなるのに
は間違いありません。現実的にどうやって操作するかを考えたら、どんな艤装をしたら良いかが解ってき
ます。自分にあったやり方が解れば、どんなヨットが良いかもわかってくる。

セーリング操作はこれだけではありません。

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