第六話 コマー社のコメットシリーズ

イタリアのコマー社、年間建造艇数が約100艇、大量生産の造船所が約2500艇ぐらい建造
していますから、それに比べると小さな造船所です。でも、その分、建造には力の入れどころが
違っていました。彼らは、今後量産方向へ行くつもりは無いと言っています。

品質の向上と、それでも高くなり過ぎ無いようにという考え方がベースにはあり、あくまで個人
オーナーを対象に考えている。そして何より、ヨットはセーリングするものという考え方がベース
にある。基本的にはクルージングヨットからスポーツヨットという範疇を維持しています。

建造にあたっては伝統的な建造方法、ハンドメイドという手法を取り、これに加えてバキューム
バッグ方式も行っている。デッキや水線以上のハルにはサンドイッチ工法により上部側を重く
しないように、また、船体の樹脂もビニルエステル樹脂を採用し、使用ステンレス部分は全て
316、バルクヘッドなどは全て船体内側にラミネートされている。キールは鉛に強化の為、アン
チモンを混ぜ、キールボルトはもちろんステンレス316.ポイント、ポイントに優れた素材を採用
しながら、だからといって高価になり過ぎないようにという配慮がなされ、ちょっと良いヨットである。

クルージング艇でありながら、セーリングを意識し、スポーツとしてのヨットというコンセプトがある。
ですから、メインシートのトラックは全モデル、コクピットにある。もちろん、スポーツ性能をもう少し
強調したスポーツモデルというのもある。とにかく、クルージングであっても、セーリングを忘れない
ヨットです。極端にレースに向かうわけでは無く、内装も豊富に木材を使ったウッディーな内装であ
あるが、できるだけ重心は低めに、中庸といえるかもしれませんが、多くのヨットがクルージング側
に位置するのに比べれば、それより少しセーリング側に居ると言えます。

このヨットが完璧であるとは言いませんが、一般のクルージング派と称するオーナーの方々に、ただ
セーリングするのでは無く、セーリングの面白さを伝えてくれるヨットだと思います。スポーツするクル
ージング艇です。こういう考え方には多いに共感を覚え、全体的なデザインもヨーロッパのトラディシ
ョナルなデザインを基本としています。ただ、スポーツタイプであるSモデルには、もう少しスポーツ的
デザインを強調していますが。

前々から、ヨットはセーリングを楽しむのが基本と考えていましたので、それにピッタリ合うヨットでした。
それに、品質的にもグレードが高いし、かといって極端に高価ではありません。スワンやヒンクリーが
良いと言っても、高価過ぎては買えない。一方、安ければ良いという物でも無い。年間100艇というのは
程良い建造艇数ではないかと思います。建造艇数が多ければ、それだけ個々に手はかけられないが
建造艇数が少なければ少ない程、手はかけられるが高価になってしまいます。ちなみに、ヒンクリー社
で年間10艇以下、スワンでは30艇、セーバーでは60艇、量産艇では2000艇オーバー、この中間あ
たりはかえって難しいかもしれませんね。価格と品質が中途半端になるかもしれません。

モデルは33フィートから、73フィートまであり、オプション群は豊富です。何でも標準という考え方は
していません。何故なら、個人オーナーが対象ですから、オーナーがどんなコンセプトでヨットを使い
たいのか、それにできるだけ応え様というのが姿勢です。もっとスポーツ性を高める為にパフォーマン
スマストにするか、或いは、ファーリングマストにするか、セールもクルージング用か性能重視か、そう
いう選択ができるようになっています。つまり、オプションが多いというのは面倒な事です。その面倒
をあえてするかどうか、それは造船所がどんなコンセプトを持っているかにかかっています。選択の
余地が無い場合、それは作り手にとっては楽ですが、オーナーにとっては自分のコンセプトをできる
だけ受け入れてくれる方が良いでしょう。

こういう考え方に賛同し、取り扱いをしています。但し、あくまでプダクション艇であり、カスタムでは
ありませんので、できない事もあります。但し、73フィートはカスタムです。

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