第七話 M 36 、D36 & フレンドシップ40 

ブレンタ38 ディスタンシア60

この3艇は全て共通したコンセプトです。アレリオン28がシングルハンドによるデイセーラーとして
成功してきました。あるひとつのジャンルが成功し、人口も増えてくると、同じコンセプトでも、もっと
要望も変化が出てくるものです。この場合はサイズでした。キャビンもそんなに広くなくて良い、でも
もう少し大きなサイズでシングルハンドで乗れないか。そういう要望が増えてきたのでしょう。

外洋専門の造船所は、このマーケットに36フィートで応え、ステアリングの左右にウィンチを配し、
ここに全てのコントロールを集中させました。オプションになりますが、ブームファーラーにして、電動
ウィンチにしてしまえば、簡単にセールを上げて、トリミングまで実に楽にに行えます。低い重心は
もちろん、フィンキールを持つこのデザインは、アレリオンと同じ、近場のセーリングを多いに楽しもう
気軽にセーリングしようという、これまでの外洋艇とは全く逆の考え方です。キャビンもメインサロン
のみ(バウキャビンはオプション)、それにトイレと簡易なギャレーがあるだけです。それでも、デイ
セーリングからウィークエンドセーリングまでに使うには充分、何より、気軽に、高い帆走性能をシン
グル操作で行える。これがM36です。

フレンドシップ40は、この考え方をさらにすすめ、40フィートとしました。このヨットの凄い所は、40
フィートとサイズアップしただけでは無く、全てをボタンひとつで操作できるようにした事です。ブーム
ファーラーのメインを上げ下げ、シートのトリミング、通常のウィンチでは無く、ビッグボートのシステム
を採用し、シートを引いたり、出したりがボタン操作でできるというシステムです。これにはまいりまし
たね。やっぱり彼らはやる事が違う。このシステムは実は既に採用されており、イタリアのブレンタ
38にも、ドイツのディスタンシア60にもこのシステムが採用されています。大きなセールを上げるには
相当な力が必要になります。それを全てシングルでこなすという事になりますと、文明の利器を使って
ボタンひとつで上げられるようにした。ついでながら、シートは従来の電動ウィンチでも引く事はできたが
出す事はできなかったので、これに採用されているシステムは引く、出すの両方ができる。この事によ
って、一人でも、簡単にセーリングができるようにしたものです。

これらのヨットは品質的には高いというより、非常に高い。ですから高価です。昨年の秋のボートショー
にデビューしたのですが、そう簡単には手が出ません。M36で4000万オーバー、フレンドシップ40と
もなりますと1億円オーバーします。そこで出てきたのが、D36です。このヨットは全く同じコンセプトを
持ち、それらの価格の高さを見て、価格を抑える事を考えた。必ずこういうのが出るものです。そこで、ア
メリカで建造していたのでは難しいので、タイランドで建造しています。海外から指導技術者を呼び、タイ
で建造する事によって、価格をおさえたわけです。ただ、一般的な大量生産艇よりは高いですが、他の
同じコンセプトを持つ艇に比べるは遥かに安く建造する事に成功しています。このヨットで約2000万オー
バーというところです。

とにかく、クラシック、シングルハンド、デイ/ウィークエンドセーラー、帆走性能の高いヨットがある一定の
マーケットを持ってきたという事実があり、これは今後もっと増えるであろうと思われます。人口が増えれば
もっとバラエティーに飛んだ種類も出てくるでしょう。今こうして考えると、最初に現れたアレリオン28の功績
は大きいと言えます。アメリカでは多くのオーナーがキャビンに泊まったり、外洋に出たりしています。でも、
反面、忙しい人達、ヨットだけが趣味というわけでも無い、もっと気軽にセーリングを楽しみたい、そういう人達
も居るという事ですね。私が見る限り、日本人にはぴったりのコンセプトだと思いますね。今後、もっと価格を
抑えたモデル等が期待されますが、その為には、こういうコンセプトがもっと流行らなければなりません。
こういう楽しみ方を知ると、キャビンが大きくなければなんては思わないし、何でもかんでもひとつのヨットに
要求する必要も無い事がわかります。それでいて、日常のセーリングには、はるかにこういうヨットの方が面
白くなる事でしょう。外洋に行かないなら、これで充分どころか、こちらの方が面白い。でも、まだ高いですが。

M36 D36 フレンドシップ40

ブレンタ38 ディスタンシア60

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