第七十二話 デイセーリング

アメリカではデイセーリングというジャンルのちょっとした流行があるように思えます。ここでも紹介しま
したが、M36やフレンドシップ40は、手の届かない高級艇です。でも、もっと身近に、セーリングを楽し
む為に、小型ヨットにもっと近づくべきだと思う。ディンギーに乗りなさいというのではありません。まあ、
25フィートから30フィート以下ぐらいで、今の大きな30フィートでは無く、もっと重心の低い、フリーボ
ードの低い、ボリュームがあまり大きくないヨットが良いように思える。

初心者が小型ヨットから始めて、だんだんと大きくしていく。一方、小型ヨットのまま、それが良いという
人が居る。或いは、一旦大型へ移行し、再び小型に戻ってくる人も居る。日本ではなかなかそういう人
は少ないですが、小型ヨットをもう一度きちんと捉えるべきだと思うのです。

小型ヨットはセーリングの醍醐味が全て味わえる。喜びも、スリルも、感動も恐怖も全て味わえる。全て
が凝縮しています。しかも、一人でも簡単に操船できる。また、遠くに、大洋を渡る事無く、充分にヨット
のエッセンスを味わえる。1日あれば、或いは半日あれば、気軽にセーリングの全てを味わえる。それな
のに、日本では小型ヨットがだんだん見放されていくように思えます。

今のでかいヨットの縮小版なら、あまり気持ちが動かない。何故なら、サイズにしてはキャビンがでか過
ぎて重心が高いからです。それをシングルで乗る事は可能だろうが、それなら、大きなサイズが良いと
感じるだろう。でも、しっかりした造りで、重心が低く、美しいヨットなら、小型サイズもすてたもんでは無い
むしろ、大型よりも魅力がある。昔は日本にもそういうヨットがあったが、もう造られていない。

大きなヨットの魅力もわかる。でも、今の日本に必要なのは、小型サイズのデイセーラーの普及ではない
かと思う。それで、ヨットの全てを知り、気軽さを知り、セーリングが何ら特別な物では無く、日常的な物
であるという身近な存在になる。身近に感じれば、ヨットに対する感覚は異なってくる。小型ヨットには
ヨットのエッセンスが凝縮しているのです。

ぶらっときて、ぶらっとセーリングする。それがどんなに気楽なものか想像してみてほしい。何も、ヨットに
たいそうな物を期待しなくても、セーリングさえ、気軽に、気持ち良くできれば、それで良い。ヨット以外に
だってしたい事はたくさんあるのだから。構えなければならないヨットなら、セーリングを心から楽しむ事
はできない。ここで言う小型ヨットは、あくまで大型艇の縮小版ではありません。最初から、セーリングを
気軽に楽しむ為に、デザインされたヨットの事です。それらはただ小型というのではありません。最初から
そういうコンセプトで建造されていますから、小さくても力持ち、小粒でピリリと辛いのです。吹いても安心
頼りになる小型ヨットです。小型だから、シングルでも、簡単に扱える。あっちこっちに手が届く、それでも
波に強く、ソフトな乗り心地で、腰が強く、とにかく、自分とヨットが一体になれる。操船して面白い、これぞ
スポーツヨットに相応しい。安心して乗れる、小型ヨットで、デイセーリングを堪能してみようじゃありません
か。でかいヨットでエンジンで走るより、酒ばかり飲んでるより、気持ちを集中して、息を呑むようなセーリン
グをしてみませんか?ヨットやるなら、是非、セーリングを感じましょう。

ある方、ヨットビギナーです。彼は、ヨットはエンジンを使うのはマリーナの出入りだけだと勝手に思っていた。
そういうもんだと思いこんでいたのです。ですから、マリーナを出ればすぐにセールを上げて、エンジンカット。
誰でもそうするもんだと思っていた。だから、彼は今セーリングに夢中です。もっと、より良いセーリングを目指
して、面白がっています。年配の方です。誰でも、一旦セーリングに集中してやれば、その味わいに夢中に
なると思いますね。

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