第九十話 想像と現実

頭の中だけで想像をめぐらしていると、なんでもかんでも必要に思えてくる。せっかくだから、
どうせなら、万一の為に、あれも便利、これも便利、際限無く浮かんでくる。でも、実際乗って
みると、使わない、使えない物が多い異に気付く。実践が伴わないで想像ばかりしていると
現実とのギャップはかなり大きくなってくる。

どんどん乗って、実際のセーリングの中から必要と感じて設置していく方法が本当はもっとも
良い。無駄が無い。無駄が無いのは使いやすいし、実に自分にフィットする。新艇を購入した
ら、それが最高の点に達したわけでは無い。ここからがスタートで、乗りこみながら、自分なり
の工夫をしていく。それが楽しいわけで、そうやって、ヨットも自分も同時進行で進化していく
のが良いし、それが楽しみでもあると思う。新艇は完成では無く、未完成なのです。

想像と現実が近づいている人は、ヨット経験の豊富な方でしょう。でも、彼の意見がいつも正し
いとは限らない。何故なら、あなたと彼は別の人間ですから、違った考え方、物の見方、価値観
がある。同じであるはずが無いので、参考にはしても、最後は自分で決める。

新艇の段階で何でも設置しておくという考え方もあるだろうが、実際には、後からでもどうとでも
なる。計器ひとつ付けるにも、どこに、どんな計器をつけたら最も使いやすいのか、それはそれぞ
れ事情が違う。例えば、風向風速計、スピード、デプス、GPS、オートパイロット、こういう機器は
ステアリングのすぐ前に付けてくる事が殆どです。みんな同じ設置の仕方です。シングルハンド
ならそれでも良いかもしれない。でも、クルーが居る場合なら、例えば、風向風速やデプス、スピ
ードなどは皆が見える位置の方が良いと思う。それに、これらの機器はいちいち操作はあまり
する事が無い。GPSとオートパイロットは操作が居る。そうするとステアリングの前で、手が届く
方が良いだろう。

計器類だけでは無いだろう。ハリヤード、シート等のリード位置、そういう物もどこにあったら最も
使いやすいか、それらは変える事ができる。でも、実際乗らないと解らない。どれかが正解で、
他は間違いという事は無く、ある事情におて、それぞれが全て正解ではある。つまり自分の正解
を自分で見つける楽しみがある。

コクピットドジャーは最近のヨットでは殆どついてきているが、反面、前が見にくい。数年でどんどん
買いかえるなら、それは業者にとってありがたい話でもあるが、長く乗るならそんな工夫をしていく
のもありではないかと思います。既製品はあくまでデザイナーが考えた、一般的に良いと思われる
装備の仕方でしょう。この一般的というのは、欧米人の生活習慣から見た一般的であって、日本人
はまた別の生活習慣を持つ。体の大きさ、パワー、休みの取り方、ヨットの過ごし方、みんな違う。

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