第三十六話 ヨットの運用

どんな乗り方をしますか?どんなヨットライフを求めていますか?それによって、どんなヨット
が良いのか、選択の方向性が決まる。とは言いながら、そんなにバラエティーのある使い方
があるわけでは無い。日本人にとって、ヨットに住み込むという事は稀ですから、まず住む事
は考えられない。たまに泊まる程度、しかし、それも少ない。たまに宴会に使うか、デイセー
リングするか、遠くを目指すしか無い。遠くと言っても、外洋となると尚少ない。そうすると、
一般的には沿岸での遠くか、デイセーリングという事になる。

多くの方々が遠くへのんびりと考えられる。でも、これもなかなか誰でもはできない。第一
暇が無い。それで暇ができるまでの間、近場でうろうろするしかない。うろうろするなら、セー
リングして、セーリングを追及しながら、スポーツして、エキサイティングに楽しむのが良い。
それが私の最もお奨めしたいスタイルです。クルージング派の方々はセーリングをないがしろ
にされているように思えます。そこに楽しさがあるのに、セーリングはレーサーに任せておけ
と言わんばかり。それではヨットの醍醐味は味わえない。味わう事が無いから、後は宴会に
使うしかない。毎週毎週宴会ばかりはできないので、宴会しない時は使わない。でも、いつか
は遠くへ行ってみたいと思う。

遠くに行く事とセーリングとは全く違う次元の話です。遠くへは主機はエンジンです。パワフル
なでかいエンジンがほしくなる。でも、セーリングの主機はセールです。根本的に違うのです。
同じヨットであるが、根本的に異なる。遠くへ行くのは旅としての楽しみであり、車や電車で行く
代わりに、ヨットで行く。ヨットの旅です。いくら旅が好きでも、年がら年中旅ばかりというわけには
いきません。多くの方々は小さな旅をするだけでも大変なのです。それで、お奨めは主体は
セーリングに置く。セーリングをスポーツし、汗をかき、ヨットを自在に操って、セーリングそのもの
を楽しむというスタイルをお奨めします。これなら、誰でも、目の前で、一人でもできる、しかも、
誰でも最初はここから始まったので、誰でもできる事です。そして、年に1回でも少し暇ができれば
仲間を誘って、小さな旅を楽しむ。これが一般的であり、誰でも楽しめる方法です。そうなると、
近場のセーリングは旅では無いので、思いっきりセーリングを楽しむのが良いのです。

そうなるとどんなヨットが良いのかが、解ってきます。セーリングが楽しいヨット、帆走性能が良い
ヨット、でもレースではありませんので、速さだけが全てとはいきません。安全であること、シングル
ならシングルで操作し易いヨット、しっかりしたヨット、スタビリティーの高いヨット、そういうのが良い。
そういうヨットでもちゃんとキャビンはある。多少狭いとかそういう事はあるかもしれませんが、小さな
旅には充分です。キャビンを犠牲にした分、性能は良い。ヨットライフの多くを費やすのがセーリング
ですから、セーリングが面白いヨットの方が良いのです。

先日、ノルディックフォーク25でセーリングしました。フリーボードが低いので、水面は実に近い。
手が届くほどです。それでいて、どっしりした船体は安心だし、波に突っ込んでもソフト、強風になる
とかえって面白くなってくる。恐怖感など微塵も沸かないのです。決して、速いわけでは無いのです
が、セーリングしていて面白いのです。まるで自転車でサイクリングに出たような気分です。もっと吹け
と言いたくなる。もっとエキサイティングに走りたくなる。それで、こういう狭いキャビンでも、少し荷物
を積んで、小さな旅に出るという事も充分できます。何でも積み込んだ豪華な旅も良いでしょうが、これ
はこれで、自然な旅と言いますか、人工的な物が少なく、気楽になれる。行った先でも停泊にはあまり
困らないし、狭いのが嫌になったら、ホテルに泊まったって良い。

気軽ですから、暇さえあればいつでも乗れる。たかがヨットです。全てを求めて、頭で考えた全ての便利
を積むなんて必要ないのです。弁当もって、小さな荷物で気軽に出る。着いた先で、小さな手荷物ですぐ
に上陸もできる。ヨットに泊まってもいいし、民宿でも、気軽さが何よりです。そういう小さな旅を楽しみ
そして日常的にはエキサイティングなセーリングを堪能する。強風に強いですから、乗れる日も多くなる。
毎日曜日が穏やかな天候ではありませんから、時化に強いというのは安全でもありますが、乗れる日も
多くなる。吹いた方が面白くもなる。穏やかな日のセーリングは快適かもしれませんが、エキサイティング
では無い。でも、時化に弱い艇では心もとない。吹いて、それを面白いと思えるようなヨット、安心できる
ヨット、充分スポーツできますね。

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