第四十四話 CITY OF SAILS

最近、ニュージーランドからヨットで来た人と知り合いになりましたが、ニュージーランド
のオークランドの別名は”CITY OF SAILS"だそうです。まさしくヨットの町と言いますか
5人に一人はヨットを所有している。週末ともなれば、海はヨットだらけ、それほど、ヨット
というものが根付いている。何ら、特別な遊びでは無いようです。

週末になると、鱒釣り、ちなみに餌釣りは禁止だそうです。それは餌をつけると釣れすぎ
るという事で、疑似餌で釣る。他にはサイクリングとか、ラグビーが盛ん。それと同じよう
にセーリングにも出る。セーリングは釣りに行くという姿勢と何ら変わらないのかもしれ
ません。釣りが好きだから釣りに行く。セーリングが好きだからセーリングに行く。そんな
もんです。

釣りでもスポーツでも、積極的に行動しに行くという姿勢で、積極的に楽しもうという姿勢
です。やっている行動そのものを楽しんでいます。セーリングはと言いますと、二通りあっ
て、スポーツ的に走る積極的な楽しみ方があって、もうひとつはただのんびり過ごすという
ものです。後者は普段の仕事で疲れた心身を癒すというようなニュアンスがある。ヨットで
無くても良いのだが、たまたまヨットだったという感じがある。こういう場合はなかなか積極
的に運営するという事にはならない。たまの気分転換、もっと疲れるとヨットにさえ乗れない。

自然の中ですから癒し効果は大きいでしょうが、でも、積極的に運営するという姿勢もあって
しかるべきと思います。テニスをするのにのんびりしたいとは思わない。ゴルフでも野球でも
サッカーでも同じ事です。そのものを楽しむには、積極的な姿勢で臨む事が、それを充分に
楽しむ事になる。スポーツはのんびり、だらだらやっても面白くありません。でも、ヨットという
のはそういう姿勢でやっても、ある程度は楽しんだ気になれる。ここがミソですね。それが
悪いとは言いませんが、それでは充分にヨットを楽しんでいるとは言えないのではないかと
思いますね。テニスやって、山なりのボールをのんびり打ち合う。そんな雰囲気でしょうか。
それだけでは面白くなくなってきて、鋭いボールを打ち返したりしたくなる。うまくなりたいと
思う。ヨットも同じです。

ヨットは遠くに旅をするという目的以外は、セーリングそのものを積極的に楽しむのが良いと
思うのはその為です。山なりのボールを打ち返すばかりか、鋭いボールやサーブを打ち込む
というのと同じで、そこにスポーツ性を見る事によって、もっと楽しめるのがヨットです。のんびり
やっていてもそれなりにセーリング感を味わえるのは良い事なのでしょうが、それだけに、そこから
一歩前に進む事を忘れてしまう。ヨットは深いと言いながら、その中に入ろうとしない原因だと
思います。入らなくても、それなりにセーリング感が味わえるからです。でも、それはまだ山なりの
ボールを打ち合っているのと変わらない。

一歩進んで、鋭いサーブとしたいと思い、そう進んでいくと、もはや遠くに行かなくてもヨットが楽し
めるという事に気づく。走るのがレースでは無くても、楽しめるという事が解ると思います。
一日に2,3時間、たいした体力も要らない。頭と感覚のゲームです。そして、思ったとおりに、
コントロールして最高の感覚を得られた時、ヨットというものを見直す事になります。そして、自然
はその舞台を用意してくれます。遊んでもらっているようなものです。それにどう関わるかは自分
次第ですが、その自分次第で楽しくもあり、退屈もある。

もっともっとヨットが増えて、”COUNTRY OF SAILS”と呼ばれるようになると良いですね。その為
にはセーリングにもっと入っていかなければなりません。楽しまなくてはなりません。私の仕事は
多くの人達がもっと楽しめるようにする事です。それには、遠くを目指す人をたくさん増やすより
今、目の前で誰でも楽しめるセーリングという物を、もっと追求していく事だと思っています。
まるでスポーツのように楽しむという事を知っていただきたいと思います。

人はいつかは遠くへ、のんびりとと言う方が実に多い。それが唯一の楽しみ方であるかのように。
しかし、もっと身近に楽しむ方法があるという事、そして、それが決して船旅の楽しみ方に劣らない
という事、それを知ってほしいと思います。

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