第五十四話 ヨットをトータルで考える

業者は自社扱いのヨットを薦めます。ここが良い、速い、あれもこれもついてる
キャビンが広い、まあ、いろいろあると思います。しかしながら、その後、オーナ
ーにはずっと楽しんで頂かなくてはなりません。それはヨットを動かすという事
だけでは不十分です。快適に動かすには、その下地となるヨットのコンディション
をいつも良い状態に保っておく必要がある。それがあって、いつも気持ちよくセー
リングが可能となる。出る度にトラブルでは嫌になるのは当たり前ですね。

トラブルで電話を頂く、でも、オーナーによってはそのトラブルの説明が良くできな
い方もおられます。それではこちらも答えようが無い。それはオーナーが自分の
ヨットについて知らないからです。難しい事は別にしても、基本的な事は、ヨットで
遊ぶ限りは必要な事です。例えば、水漏れがある。海水なのか、清水なのかで
対応が異なります。どうやって確かめるか、舐めてみる事です。海水と清水は
進入経路が全く違うし、点検箇所もしぼられてくる。エンジンがおかしい。どういう
時にどうおかしいのかです。ギヤを入れた時におかしくて、ギヤを入れない時は
正常とか、そうすると、ある程度トラブルの原因を絞る事ができる。できるだけ
多くの情報がほしいのです。そうでないと直接見ないと解りませんと言うしかない。

ヨットをトータルで快適にするには、我々もそうですが、オーナー自身もレベルを上
げて運用を考える。トラブルを100%避ける事はできないかもしれませんが、かな
り軽減する事はできます。トラブルがなければ、それだけ楽しい時間が増えてきま
す。それだけではありません。少しづつでも自分が知ってくると、それが面白い
と感じるようになります。そして知ってくると、人の話もよくわかる。それだけ安心と
言う事にも繋がってきます。どんなに大金持ちで、メインテナンスを業者にやらせて
いても、海に出れば自己責任、自分の命は自分で守らなければなりません。
それが解っていると安心だし、洋上から電話もらっても、的確な質問には的確な返
事ができます。

こういった上で、セーリングを楽しみます。コンディションは上々、そうで無いなら、
いかに良いヨットだろうが、その性能を発揮できない。その性能の良さを享受でき
無い。それなら何の為に良いヨット買ったのだろうという事になる。安いのも高いの
もそれ以前の問題です。

そういうグッドコンディションでセーリングを楽しんでこそ、最高のセーリングが味わ
えます。スタビリティーの高いヨット、帆走性能の良いヨット、そういうヨットの違いが
実に良くわかる。良いコンディションのヨットに乗り続ける事で、自分の感覚に良い
状態のセーリングが自然にインプットされる。悪い状態で乗り続けると相応の感覚
がインプットされる。この差は実に大きいと思います。

是非、御自分のヨットをトータルで見てください。そしてトータルな運用を考えてくださ
い。

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