第七十二話 考える

解らない事はどんどん聞くというのは良い姿勢でしょう。どんどん聞いて知識を増やし
自分の物にすべきです。ただ、聞いても自分の物として蓄積されなければなりません。
聞いて、その場限りではもったいないという事になります。そこで、自分で考える、理解
する、納得するという事が必要になります。

内容がかなりの専門知識を要するような事で、理解には相当高い知識が要求される
なら、これは難しい。でも、多くの事柄がそういう物では無く、よく観察する事、よく考える
事、そして聞いた知識を良く理解して、納得する。そうすれば知識が自分の中に蓄積
されていきます。この積み重ねは大きな違いとなるでしょう。右と言われて、何も考えず
に従う。その理由とか、何故かという事をその都度理解していただきたいと思います。

こうやって、各部の働きを考えてみると、ひとつひとつが理解されます。もちろん、これだ
けでは充分ではありませんが、少なくとも各部を理解する必要があります。セーリングに
おいてはそれら各部が複合的に作用するので、難しくなります。でも、これもひとつひとつ
を紐解いて理解しようとゆう姿勢が大切ではないでしょうか。全部が解るとは言いませんが
理解は深まるはずです。知らないから聞くというのは良いのですが、理解しようとしない人
は結構多いものです。理解していくと、知的な遊びが台頭してきます。それがまた面白く
なるんです。これは人間ならではの特有な欲望であり、そこから人間ならではの工夫も生ま
れてきます。そうなると、ヨットはただの肉体的遊びから、知的遊びも加わって、二重の遊び
ができる。

だいたい大の大人が夢中になれるには、これしか無いんです。単なる肉体的な遊びでは夢
中にはなれない。どんな遊びでも、考えて、進む、工夫する、進歩する。そういう事が面白い。

知識は失敗からも得られる。だいたいうまく行った時より、失敗した時の方が勉強になる。
人生もうまくいかない事ばかり、だから人間は成長する。そういうもんだと思った方が良いよ
うです。思ったとおりにはならない。それは思う事が完璧では無いからで、完璧では無いから
うまくいかない。そこで失敗から学ぶという事になるのでしょう。回りのうまくいかない事柄を
見ると、それが自分のレベルと思い知らされます。人間は成長を義務づけられた存在である
ような気がします。学ぶまで何度も同じ失敗を繰り返す事になる。

初心者であれ、ベテランであれ、今居るところから学んで、知識を広げ、蓄積し、それを基に
体験に変えて、再び学ぶ。これがまた考えようによっては面白いという事にもなる。まあ、神様
というのはうまいこと造ったもんです。

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