第二十五話 暴言
日本のヨット程、使われずに放置されているヨットは無い。若い人達もヨットに来ない。そしてオーナーの老齢化が進めば、その後を引き継ぐ者達はいない。となると、このままでは日本からヨット遊びという物が消滅しかねない。 これは業者にとっては死活問題、とは言っても、私が現役であるうちにはまだ大丈夫でしょうが、でも、それにしても死滅はしなくても衰退というのがよろしくない。ヨットが日本文化に合わないのか?まだ、それを結論づけるのには早すぎる。まだまだ導入期です。今はどうやったら面白いのか、面白くなるのかを模索している時期かもしれません。 今のヨットは面白くない。これが活気が無い理由だと思います。時間が無いからでも無く、経済が衰退してきたからでも無い。ヨットが面白く無いからです。とは言っても、ヨット自体が面白いとか面白くないとか判断するわけでは無く、使う側の判断ですから、使い方に問題があるという結論です。 欧米人のクルージングヨットと称されるヨットをそのまま導入してきました。欧米人とは異なる習慣と文化を持つ日本人がそのまま持ってきた。そこに使い方の違いがあり、それが合わないのではないかと思います。車ならそのままでも、車としての使い方において日本と欧米でも大差は無かった。しかし、ヨットとなると違う。ヨットは純粋に遊びの文化です。 ヨットの使い方にはいろいろあるかもしれません。しかし、一般的に考えると、セーリング、クルージング、レース、キャビン、こんなところでしょうか。日本ではクルージングをします。島巡り、遠出、でも時間の制約がある。船に宿泊、パーティー、しないことは無いが少ない。欧米人もクルージングをする、でも、同時に宿泊、パーティはしょっちゅう。そして、欧米のヨットはパーティーボートとなってきた。パーティーボートは設備と広いキャビンが良い。クルージングはエンジンで行く。島かげで アンカーうってゆったる寛ぐ。日本では、宴会はするが、そう度々では無いし、宿泊もあまりしない。 となると、後は遠出、クルージングしかない。でも、まとまった休みは年に2回ぐらい。それもその度に何らかの行事があったりする。土日にいける範囲は狭いので、同じ場所ばかりでは面白くない。 根本的に欧米と同じ使い方をする事が間違い。たまに宴会、たまに宿泊で良いわけです。それで、その他の時には何をするか、これが考えどころです。 エンジンで走り回っても面白くない。漫然とセーリングしても、エキサイティングでは無い。これもたまにで充分。何をするか。これまで言ってきた事です。日本人はセーリングそのものを楽しむという乗り方が最も合っている。日本人は勤勉と言われ、何かを熱心にするとか、極めるとか、熟達するとか、そういう事に合っている。遊びというと、快楽というイメージがあるかもしれないが、本当の遊びは快楽という単純なものでは無く、夢中になれるものです。夢中になれるのは何か、真剣に取り組むことです。テニスでもサッカーでも、野球でもゴルフでも、マージャンでも、ただプレーするだけでは無く、うまくなろうとして取り組み、真剣になる。そして上達するから面白いのであって、ただプレーしているだけならたいしてエキサイティングでも無い。 ところが、ヨットに関しては、初心者からある程度乗れるようになると、もうそれ以上上達しようという意欲が薄れてしまう。そして、暇も無いのにいつか遠くへと思ってしまう。そこに問題がある。遠くは行けるようになって考えれば良い事であり、今は、できる事をする。そしてそれがエキサイティングであってほしい。結論は、セーリングです。それもデイセーリングです。よりスムースなセーリング、より良いセーリング、つまりスポーツです。上達する事で興奮し、絶妙なバランスで感動する事です。それには真剣にセーリングする事です。野球やゴルフやマージャンをやるのと同じです。自分のレベルから少しづつアップしていくプロセスを楽しむ事です。 欧米でデイセーラーが流行っているという事を何度も書いてきました。これなどは、欧米人が気軽なセーリングに目覚めた証拠です。デイセーラーといえば、以前は20フィート以下ぐらいのヨットをさしていました。でも、今は35フィートや40フィートなどもデイセーラーとして建造されてきました。 欧米人がパーティーボートからセーリングヨットに変化してきている。これらが欧米で一般化した時にはこういうヨットが日本に入ってくるでしょう。でも、一般化するにはまだまだ時間がかかる。それまでは待てない。 デイセーリングこそが日本人に合う乗り方だと思います。これだけと言ってるのではありません。これを主にするという事です。セーリングに取り組み、上達する過程を楽しみ、絶妙のバランスを得た時の感動を得る。これを主に楽しむようになると、どういうわけか、たまの宴会も、たまの宿泊も もっと楽しめるようになる。これで日本ヨット文化は花盛り。 ですから、セーリングが主で、キャビンは従、気軽さを持って、その日の数時間でもエキサイティングに楽しむ。例え体力に自信が無い人でも、意識さえすれば良いだけです。より良いセーリングの意識さえあれば、その中でちょっとできる事をする。意識さえしていれば変化が感じられるようになる。自分のレベルで良い。そう思うのです。初心者の頃、へたなりに、出るだけでも興奮があったはずです。それなら自分のレベルでそれを演出する。できる範囲の演出をする。それが最も楽しめる秘訣ではないか。セーリングは緊張を伴う。遊びも緊張をともなってこそ、冒険であり、冒険はエキサイティングなのです。ワイルドなのです。是非、ワイルド野郎になって、セーリングを謳歌して下さい。子供のように無邪気で遊べるなら、最高です。子供は一生懸命遊ぶ。これが遊びの極意なのではないかと思います。 |