第五十四話 何が面白いのか?

何がって、乗らなきゃ解りません。それじゃ話にならないので、何とか書いてみます。最近、ノルディックフォーク25の問い合わせが増えてきました。このヨットはシンプルにセーリングが面白いというヨットです。どういう風に面白いのか?

風が強くなると、それに合わせて、風を逃がす。セールがうまくコントロールしていくと艇速も上がる
少し慣れるとブローが入るタイミングが解るので、それに合わせる。うまく言えませんが、スポーツカーで曲がりくねった道をうまく操縦して走りぬける。それに似たような気分ではないかと思います。ヨットはもっと複雑ですから、うまくなればなる程、そういう気分は高まると思います。スピードはかなり遅いのですが、これがどうしてどうして、スピード感があります。言葉で言えば、これだけなのですが、自然条件は毎回違いますので、いろんな場面での操船が楽しめます。そして、たまに全てが整う事がありますが、これは皆さんに味わって頂きたい、何とも言えない快感です。

この快感を得る為に、日頃から舵の操作やセールのトリミングなどをやる。要は味わいの問題です。この為に、メインテナンスをする。ヨットを磨く、そういう事をします。つまり、大物釣りを狙ってロッドやリールを磨くという事と同じです。釣りの感覚を知っているからこそ、そうしたくなる。仕方なく
メインテンスをするのとは違います。したくてやってる。セーリングの醍醐味を味わう為に、メインテナンスをしたくなる。同じ感覚ですね。それぐらいの快感がセーリングにはあります。ただ、大物がいつもヒットできないのと同じで、いつもそういう場面に出会えるわけではありませんが、必ず、やってるとそのうちに来る。それより小さいのはいくつも来る。フィッシングと行為は違いますが、感覚は同じです。それを追い求めるのがスポーツセーリングではないでしょうか。そうすると、キャビンとかはその次となってきます。セーリングの邪魔になるようなキャビンはいけません。キャビンで過ごすのを夢見て、ヨットを磨くというのは、どうもピンと来ません。

このヨットはどんな走り方をするだろう?どんな感覚を与えてくれるだろう?速さだけの事を言っているわけではありません。乗り心地や、コントロールのしやすさや、反応や、トータルな動きです。どれが良いとか悪いとかでは無く、自分の思い描くイメージの問題です。どんなイメージを持つかは、それぞれの価値観の違いになりますから、自由で良いのですが、これまでは皆さんキャビンを求めてこられましたので、今度はセーリングを中心に考えてみませんか?同じヨットでも、イメージは一変すると思います。そういうイメージを持ったら、どんな乗り方をするか、どんな乗り方が面白いか、明確に出てくると思います。イメージが明確なら、ヨットをもっともっと乗りたくなってくると思います。すると、自分でヨットのメインテナンスをしたくなるし、その知識も得たくなる。好循環が生まれます。

誰かに操船させて、自分はオーナーズチェアーに座ってる。それも乗り方のひとつでしょう。でも、自分で全部それができた方が絶対面白いに決まってます。この事は、自分で操船しても、あまりセーリングを気にせず漫然と走らせている時も同じです。何故なら、ヨットは勝手に走ってる。オーナーは乗せてもらってるだけです。ヨットは自分でコントロールしに行くものです。それをする人が面白いからです。同じヨットに乗っても、座ってるだけじゃ、面白さは解らない。下手も上手も関係無い。行動する人だけが、その面白さを手に入れる事ができる。

ヨットは何が面白いのか?舵を切って、曲がるから面白い。シートを引いてスピードが上がるから面白い。操作して反応があるから面白い。そして、それらが一様では無く、複雑なからみがあるから面白い。体も使って、頭脳も使って、感性も刺激されるから面白い。実に大人の遊びです。

でかいヨットをクルーを集めて、豪快に走る。スピードも速いし、面白いのは解ってます。でも、小さいヨットでも、豪快さは無いかもしれませんが、機動力と言いますか、小さいからこそ味わえる面白さもあります。日本はヨットに関しては、まだまだ先進国とは言えないと思います。なのに、小さなヨットが少ないのは、これいかに?いや、逆に、先進国の方が小さいのが多い。つまり、それだけ大きくても小さくても、それぞれの味わいがあるという事を知っているのだと思います。日本もこれからは、大きいのも小さいのも、どんどん広がって、いろんなヨットが進水して、それぞれに楽しんでいただけるようになれば、先進国の仲間入りかなと思います。昔、いつかは30フィートというような言葉がありましたが、そんな言葉はもう要らない。いつかは、こんなヨットに乗りたい。サイズが重要なのでは無く、自分の持つスタイルのイメージが重要ではないでしょうか。

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