第七十九話 セールB

ジェノアも基本的にはメインセールと同じです。ただ、マストに沿ってセールを上げるのでは無く、フォアステーに沿ってますから、条件が少し異なる。セーリング中にバウへ行って、フォアステーを見ると、丸くたわんでいる事がある。マストならこうはなりませんが、芯がワイヤーですからこうなる。
ジェノアセールはライトとか、ミディアムとかヘビーとか、風速によって使い分けます。今ではファーラーが一般的ですから、1枚のセールで微風から強風まで使う。

微風の時、先程のフォアステーのたわみ(サギング)は見られません。しかし、強風になるとサギングが出てくる。ヘビージェノアなどは強風時に使いますから、サギングを見越して、サギングがあるとセールがフラットになるようにデザインされます。また、ライトジェノアではサギングは無いので、
またより大きな揚力がほしいので、真っ直ぐなフォアステーに上げるとドラフトができる。ファーラー用はそのどちらにも使うので、どういうカットをしてあるか、実際上げて、サギング量とドラフト量を見てみる。このサギングはバックステーアジャスターで調整します。ドラフトの位置はハリヤードで行うのはメインと同じ。

今度はジェノアのリードブロックです。これがメインとは違います。リードブロックを一番前にやる。
すると、シートはセールのリーチ側に強いテンションがかかり、フット側は緩んでます。このリードブロックを少しづつ後ろにづらしていきますと、ある点で、フットとリーチの両方に均等にテンションがかかるようになり、さらにずらと、今度はフット側にテンションがかかり、リーチ側が緩んでくる。

フット、リーチに均等にかかるポイントから少し前にずらすと、フット側が緩みますので、ドラフトは深くなります。風が弱い時はドラフトを深く、そして、逆にブロックを後ろにずらすとフットにテンションがかかり、リーチが緩むので、リーチは開く。ツウィストができます。強風で風を逃がす時はこのリーチを開いて上部から逃がす。

通常、このリードブロックを前後に動かすテークルを組んでいないので、走りを見ながら、風上側のブロックを動かして、新しいポジションに設定、そしてタックする。

オーバーラップの大きなジェノアは上りで引きすぎるとメインセールに裏風をあててしまいます。メインの前側に少し風が当たる程度でOKです。とは言っても、実践で確かめてください。

言葉でこうする、ああすると書くのは簡単ですが、実践においては、その調整量などを適正にするというのは非常に難しいので、何度も何度も楽しみながら、自分のヨットに合う設定を見つけていくという事になります。それが面倒くさいと思うか、面白そうだと思うかですが、何度も何度も自分のヨットに乗って、こういう謎解きゲームをしていきますと、確実により良い設定になっていき、それが実際の帆走に跳ね返ってきますので、それを即座に体感できる。学んで、実践して、反応を体感する。そして確実にうまくなっていく。初心者でも1シーズンもこうやって集中してやりますと、相当うまくなると思います。

クローズで走る。まずは風上ぎりぎりに上る。どの程度まで上れるか、ちょっとでも上りすぎるとセールに裏風が当たる、そのぎりぎりまで上ってみてください。その時のドラフトの量、位置などに注意を払って、テルテールが全部きれいに流れるように。もし、風下側のテルテールが乱れるようなら上りすぎです。逆に風上側が乱れるようなら、もう少し上れる。或いは引き込みが足りない。
風上のリボンが乱れ、下はきれいに流れるなら、セール上部をもう少し内側に引き込んだ方が良い。という事はリードブロックを少し前に、逆に、下側が乱れ、上はきれいなら、リードブロックを後ろにずらす。乱れているリボンの方向にセールを移動させるという事になります。

ぎりぎりに上って、この角度がこのヨットの最大の上り角になる。

風が強まってきますと、せっかく適正にセットしていたのに、状況が変わってくる。ヨットはもっと風上に上ろうとする。それを抑えて舵で風下側に向けないと真っ直ぐ走れなくなります。この時、風速が強まれば強まる程、その度合いは大きくなる。それでもっと舵を切る。ラダーはこの時、大きくきれた角度で水流に当たっている。空気の800倍の密度です。大きな抵抗を造ってます。それにヒールも大きくなっています。

風が強くなるとセールは伸び、ドラフト大きくなる。ハリヤードも伸び、ドラフトは後退する。それで大きくヒールする事になり、ウェザーヘルムが強くなります。これを舵で抑えていたのでは、へたすると舵がぶっ壊れかねない。そこで、その風速で適正な状態にしなければなりません。リーチを開いてそこから風を逃がす。とりあえずシートを出して風を逃がす。すると船体はスーっと起き上がり
ヒール角度は減少、舵にかかる力もふっと軽くなります。シートを出すと上り角は悪くなりますので、
再び上るなら、風上のリードブロックを下げてタックする。1回でうまくいかなかったら、新しい風上側のリードブロックをもう一度調整してタック。メインはシートを出してリーチを開き、トラベラーで引き上げる。こういうコンビネーションをうまく見つけなければなりません。或いは、バックステーを引いてセールをフラットにするとか、風が変わるだけで、セッティングはいろんな操作の総合です。

こういう動作をやるには、例え、でかいヨットをシングルで乗れるにしても、クルーがほしいところです。クルーがいないなら、ちょっとサイズ落として、できるだけ舵を持ったまま操作できた方が、舵の感覚とかがすぐに反応しますので、解り易いし、その方が面白いと思います。舵を持った人は舵の感覚、重くなったとか、軽いとか、そういう感触を掴んで、セールの操作との連携が必要になります。そういうのが実に面白くなります。

次へ      目次へ