第八十五話 完成の域に達したヨット

シングルハンドセーリングにおけるヨットとして、いろいろありますが、デイセーリング/ウィークエンドセーリング、そういう乗り方として、アレリオンは完成の域に達してきたのではないかという気がします。前話において、ジブブームのライトエアーイクステンダーの話をしましたが、これによって、シングルハンドセーリングをまた一歩前進させています。

そもそも、シングルハンドという考え方、全てが手の届く範囲にあるという事は当然必要な事ですが、そこに加えられたセルフタッキングジブ、これまでは前々からあったアイデアでした。それをする為にはセールエリアが小さくなる。よって、フラクショナルリグでメインセールをでかくした。Jの長さは2.97mに対して、ブームの長さは3.81mあります。つまり、マストの立ち位置はぐっと前側に行って、メインセールをでかくしています。この事によって、セールエリアをあまり減らす事無く、ジブをセルフタッキングにして操作が容易になりました。

本来なら、ここまででしょうが、セルフタッキングジブというのは上りは良いのですが、セールのシートを引くリード位置が固定であり、それも前の方なので、セールを開いた時、リード位置の調整ができない。つまり、リードブロックを後ろに下げれない。それで、開く時は別のシートを用意しておいて、通常のジェノアトラックのリードブロックから引いたりしていました。

そこで考案されたのが、ジブブームです。ジブブーム自体も、それまでに無いでは無かった。でも、このシステムはブーム自体がカーブして、その物で立っている、何かで吊るしたりする必要がなかった。このブームは左右に自由に回転します。そしてブームの先端のブロックを介して、ジブのクリューに1本のシートが結ばれています。これによって、ジブのクリューはブームの先端に固定する事ができるので、風がどの方角から吹こうが、セールは常に良いカーブを得る事ができた。これは
メインセールと全く同じになったという事になります。

ここで、さらに、微風において、セールの重さとかでセールが開いてくれなかったり、特に上りで快適に走っていたのが、帰りにダウンウィンドになった途端、退屈さを感じた人も少なく無いと思います。そこで、ジェネカーでも上げれば良いわけですが、もっと簡単にする為に、このブームが自動的に無負荷の状態で外側に開くように考えた。デッキ下にピストンがあって、それで開きます。風が無くても開く。これで、どんな微風でもセールをきれいな形で開く事ができるようになった。つまり、アレリオンはどこからの風でも最適なセール形状を可能にした、微風に拘わらずです。もちろん、ジェネカーを使っても良いわけですが、それを使わなくても、ダウンウィンドでも帆走性能を上げたわけです。これは大きなジェノアを持つヨットより、効率の良い走りを提供できますので、ひょとすると大きなヨットより、そのヨットがジェネカーでも上げない限り、速いかもしれません。

総合して考えてみますと、シングルハンドのデイセーラーとして、これほど使いやすいヨットは無い、これは完成の域に達したのではないかと思います。

さて、もうひとつ、ノルディックフォークを見てみます。このヨットもフラクショナルリグで、大きなメインと小さなジブを持っています。小さなジブと言いましてもセルフタッキングではありません。

 この左の写真のように、シートの
 リードブロックに加え、さらに内側
 に引き込む為のブロックがついて います。これで上りにはセールを
 ぐいと引き込めますし、角度を落 とす時は、これを先に緩め、もっ
 と落とす時はシートを緩める。
 さらにもっと落として、ダウンウィ  ンドになる時はウィスカーポール
 が標準です。又はファーリングジ ェネカーがオプションとして用意
 されています。

 このノルディックフォークもアレリ  オンとの違いはあれ、完成された
 ヨットだと言われています。

 それはどんな乗り方を想定して、 その為のあらゆるセーリングを
 可能にしている。

アレリオンもノルディックも、乗る方の考え方もあります。でも、これはこれで、この両者は完成の域に達したと思います。以前に、未完成だから良いと書いた事があります。そして、ここで、この二つは完成の域に達したと言ってます。完成の域だけれど、オーナー流にアレンジする事は可能でしょう。でも、ただ、ひとつのヨットとして、このデザインをした方の完結の形ができたと見る事ができると思います。もっともっと変えても構わないが、これらヨットの乗り方のひとつが完成している。

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