第107話 夢の置き所

よく夢を売る商売だと言われます。お客様が持つ夢を叶える商売、聞こえは良い。
ヨットを検討するにあたって、想像しますね。クルージング、家族を連れて遠くへ、
最高の気分、家族の為に、自分の為にいろいろな想像をし、それに相応しいヨット
はどれか、と考えます。

水を差すようで悪いのですが、多くの人達が購入した時点で、夢が殆ど終わって
しまうようです。購入して、指定の桟橋に繋がれたヨットを見て、そこで満足してし
まう。ヨットを動かすにはエネルギーが必要です。そのエネルギーは所有した事で
殆どを使ってしまったら、エネルギーの残りはわずかしか残っていない。そのヨット
が大きければ大きい程、大きなエネルギーが必要となります。

夢を物では無く、その先のセーリングに持ってくれば、物は夢の最初のかけらのような
物で、エネルギーは一杯残っています。セーリングに持ってくるというのは、経験に夢
を置く。物では無く、経験そのものに夢を置いたら、動かしたくなります。

夢を物に置いたら、それ以上の経験はできない。物には限りがある。でも、経験に夢
を置いたら無限です。もっと、もっと経験したくなる。経験する事こそが目的で、物は手段
に過ぎない。ただ、目的をより良くする為の手段として物がある。どんな経験をしたいか
を想像しましょう。そして、それに向いているヨットはどんなヨットが良いのかと考えます。
本当はどんなヨットを持っているかより、どんな経験をしてきたか、の方が大切なのでは
ないでしょうか。大切というより、その方が絶対面白い。面白いというのは物が面白いと
感じるのでは無く、経験が面白いという事ですから。最も面白い経験とは何でしょうか?


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