第11話 ショートクルージング

定年退職を間近に控えた方、お二人にヨットを教えています。というより一緒に乗って遊んでいます。昨日はその内の一人と一緒に約3時間ぐらいクルージングを楽しんできました。最初はあまり風が無く、ちょっと物足りない感じでしたが、30分ほどして風が少し出てきました。とたんにヨットはスピードを増し、ヒール角度もつき、なかなかのスピード。オーナーはこの時何回目だったでしょうか、3〜4回目ぐらいのセーリングだったと思いますが、結構様になっています。ヨットのスピードというと実際は知れたもの、時速で言うと10km前後という所でしょうか、非常に遅いのですが、ところが実際ヨットで走ってみると、そのスピードが実に速さを感じさせてくれます。言葉では表現できませんが、実に興奮さえ覚えます。これがヨットの醍醐味ですね。エッセンスのようなものです。しばらく心地良いスピードで走っていますと二人とも無口になってきます。この感覚が伝わってくるのです。これを感じるに経験など必要無い、感覚と心があれば誰でも味わえます。これがヨットのい良いところです。

この3時間あまり、どこまで行ったのかって、どこにも行っていません。ほんの小さなエリアをぐるっと回っていただけなんです。ここが重要です。どこにも行っていない。だけどとても楽しかった。私は同じ海域をこれまで何度もセーリングしています。でも楽しかった。この時は風景を眺めに行ったわけでも無く、セーリング、私にとっては教える事が目的でした。でも、良い風が吹いて、楽しいセーリングが味わえた。どこかに行かなくてもヨットは楽しめるのです。

次はあっちに行こう、こっちに行こうという目的地が無くても、マリーナから出して、風向きによって方角を決める。これで良いのです。だからショートクルージングをお奨めします。これで充分楽しめるという事を知って頂きたい。毎日、海も風も異なりますから、勉強にもなるし、何と言っても気軽であるという事です。外洋を知らずしてヨットマンとは言えないという向きもあるかもしれませんが、それでもいいじゃないですか。ヨットに乗って充分楽しめるのですから。外洋に出て、航海計画を立て、準備をして出かける。大航海も素晴らしい。でも、そこらで、楽しいセーリングもあって良い。もっともっと,大勢の方々にこういう気軽なセーリングを楽しんでもらいたいものです。

それなら航海灯(夜間航行に必要な装備)なんか要らないし、このヨットのトイレだって一回も使った事が無い、清水も使った事がないんです。ただ、雨の日にキャビンでおしゃべりしたくらいでしょうか。何にも要らないんです。でも、このヨット、実に船体は美しい。これは私個人的には欠かせないです。ヨットは美しくなければならない。同感です。スタビリティーの高いヨットにメインと小さ目のジブをつけています。ですからセールを縮める必要もほとんどありません。よけいな作業をできるだけしなくて良い。その分、セーリングをもっと楽しむ。こういうセーリングのスタイルを実行すると、経費も安く、気軽なものとなります。ヨットにキャンピングカーのようなスタイルを要求する必要も無い。何も無いスポーツカーのようにサァーと行ってサァーと帰ってくる。是非、こういうショートクルージングを楽しみませんか?初心者の方に是非お奨めします。

この日は朝10:00に出航して、午後1:00頃帰ってきました。雲行きがあやしくなってきたからです。たった3時間です。天気の良い午後はショートクルージングで楽しみましょう。

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