第110話 ヨットは楽しくない

ヨットが動かない理由にクルー不足とは良く言われます。これもひとつの理由かも
しれませんが、もっと大きな理由があるんではないでしょうか。その気になれば、
クルーの一人ぐらいなんとかなるんではないでしょうか。但し、その気にならない
のが本当のところではないか。何故か?

はっきり言って、ヨットが楽しく無いからです。楽しくて仕方が無いなら、誰でも、何
とかしようと思います。飽きたというわけでは無いものの、エキサイティングでは無い。
マンネリ気味?いつかそのうちにと楽しそうな雰囲気だけ想像して、暇になったら、
とか思う。でも、暇というのは短時間ならなんとかできるもの。乗れない理由はたくさ
ん見つけられる。

初心者の頃は、早く覚えたいので、する事も一杯あった。飽きる事なんて無かった。
それなりに緊張感もあって、心が踊っていた。でも、慣れてくるとそうは行かなくなる。
クルージングだからという理由で、操船に慣れると、ある程度で満足してしまう。クルー
が居ても、毎回同じクルーでは話題も限られてくる。だからと言って、毎回、毎回、違う人
を連れてくるわけにもいきませんね。

話題もヨットのうえでは難しい話題もしたく無いし、仕事の話もできれば避けたい。そう
するとなかなか話題も弾まない。あ〜、今日は楽しかった、なんて気分はたまに皆で
わいわいやるから楽しいけど、しょっちゅうは行けない。この頃は操船にも慣れて、それ
程気も使わなくても良い。そういう時期です。クルージングだから、それ程セールのトリ
ミングもしない。ちょっとさわって、0.1ノット速くなったって、レースじゃ無いし。

こういうパターンはありませんか? たまに皆で乗るヨットは楽しい、でも、しょっちゅうこう
はいかない。だからみんな動かない。

たまのワイワイクルージングはそれでOK。でも、通常のクルージングにレーサーじゃ無く
ても、ちょっとトリミングしたりして0.1ノット速く走ってみませんか? それだけじゃありま
せん。セールカーブを見てリーチを開いたり、閉じたり、ハリヤードを締めたり、する事はた
くさんあります。そして得られるスピードはわずかかもしれませんが、重要な事はそんな事
じゃない。自分が扱う事に対して、ヨットが反応する。そして、しょっちゅう乗っているとその
反応の微妙さまで体で感じてきます。これって、とってもエキサイティングじゃありません?

いつも同じヨットに乗って体感してくると、体が自然に覚えています。そして、今日はいつもと
何か違うな、というような微妙な事が感じられるようになります。こうなると面白くなる。そうし
たらクルーとの会話はもっぱらセーリングの事になり、飽きません。ヨットは奥が深い事に感謝
さえしたくなる。本当です。回数乗れば、誰でも自然に解ってくる。そして、ほんのたまにワイワ
イとにぎやかにクルージングします。メリハリのついた乗り方を考えてください。ヨットは楽しい
ものです。

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