第8話 本物?

本物の技術、これは本物だ、あの人こそ本物だ、本物は残る、等々の言葉を聞く事が
あります。本物とは何でしょうか?いわゆるブランド品というのは、日本が世界の3割
ぐらいの市場があるそうです。この不況下において、世界の30%が日本で消費される事
実は驚異的でもあります。それらブランド物が良いか悪いかという評価では無く、一定の
価値を与えられた。本物、にせ物と騒ぎますが、全く同じでも、いやそれ以上であっても、
本物の方に価値を認める。つまり、機能性や質というより、見えない力があるようです。
それを称して本物と呼ぶ。ブランドの力。

ブランド品の本物か偽物かは別にしても、本物とはその物の本来の目的において、極めて
優れている物ではないでしょうか。その物の本来の目的以外に付加された価値を取り除い
たとしても、本質において極めて優れている事。

こうして見ると、最近の技術力の発展に伴い、あらゆる商品が優れてきています。しかし、
どれも際立つというより、使って支障の無いそこそこ、それに加えて、他の機能を多く持たせ
てきています。一方、使う側も使ってそこそこ支障が無いならば、他の機能の多い方が良い
という事もあります。全ては需要と供給の関係が成り立ちますから、とりたてて支障が無け
れば良いという考え方もあるでしょう。

100年経っても美しいヨットがあるとします。これを可能にするには、最高の素材、工法、職
人の技術などなどが全て調和しなければなりません。でも、そんなに長持ちする必要は無い
と言ってしまえば、身も蓋も無い。でも、日本に住む我々は豊富な物資に囲まれ、もう、そこ
そこには充分満たされてきました。多くの機能が付加された物より、シンプルで本質的に優
れている物、使い捨ての時代から物を大切にして、次の世代へと受け継ぐ。こういう時代に
なっていくのではないでしょうか。これこそが文化であり、本物志向であるのではにでしょうか

長く使えば、その分、他の物に消費が回る。より豊かな生活という事を考えられるのではな
いでしょうか。大量消費こそが豊かさを表すものさしであったのが、これからは、本物を長く、
大切に使い、そしてその分、心の豊かさに気を配る、というのはどうでしょうか。

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